合格者の声
VOICE企業地域経済の活性化、社会的課題を解決するプロフェッショナル養成
合格者の声
VOICE2021/12/14
青森県と秋田県鹿角郡の一部を営業地域とする「青い森信用金庫」では、地産地消の地域性の高い金融機関として『往診メインの“町医者”のような存在』を目指しています。日頃のコミュニケーションから、患者さんだけでなく、その家族や生活環境をも把握し一人ひとりにあった適切な処方を行う、地域の町医者のような人材を育成するための施策の1つとして、同金庫では2019年度より「企業経営アドバイザー」を推奨資格試験として導入しました。
今回は、企業経営アドバイザーの導入経緯を含め、同金庫が目指す人材像や人材育成のための様々な施策について、人事部次長の畑中猛志さんと企業経営アドバイザーに認定された下總由衣さんにお話を伺いました。
――まずは、青い森信用金庫さんの特徴について教えてください。
畑中猛志さん(以下、敬称略):
信用金庫は「協同組織の金融機関」と呼ばれ、銀行との違いとして「地域性」「中小企業専門性」が挙げられます。青い森信用金庫の営業地域は青森県と秋田県鹿角郡の一部に限定され、融資取引先も個人と中小企業のみと、まさに地域に根差した金融機関です。
経済を人の体に例えた際にお金の流れは血液の流れに例えられますが、個人や中小企業を取引先とする私たちは、銀行のような大動脈や大静脈を流れる血液ではなく、いわば毛細血管の血液のように体の隅々までお金を行き渡らせることが我々の役割だと考えています。
――取引先としてはどのような業態の方が多いのでしょうか?
畑中:
融資取引の約3割が住宅ローンや自動車ローンといった個人のお客様となります。残りの事業性融資取引先の業種は、建設業や卸売業・小売業などが多く、また地場産業である農業や漁業に付随した、製造業や運搬業等多岐に亘ります。
――地域に特化している貴庫では、どのような金融機関を目指しているのですか?
畑中:
私たちが目指すのは『往診メインの“町医者”のような存在』です。
事業先の財務諸表に依存することなく、経営者や従業員とのコミュニケーションから、企業の強みや弱み、今後の展望、事業承継の悩み、はたまた事務所の雰囲気や工場の機械設備状況、在庫商品の管理状況、従業員の教育体制やモチベーション等々に至るまでを、訪問することで肌で感じながら正しく理解し、的確な支援やアドバイスをお客様に提供できる存在でありたいと日々努力しています。
――素晴らしいビジョンですね。貴庫の目指す“町医者”にはどのような能力が求められますか?
畑中:
“町医者”とは、care(ケア)とcure(キュア)を併せ持つ存在であると私たちは定義しています。
まずcare(ケア)は、気にかける、心配する、見守る、といった意味合いが込められています。当金庫では全職員の23.3%、営業店の29.7%が渉外担当者であり、ここ数年の割合推移は増加傾向にあります。実際に現地を訪れる“訪問活動” を続けていくことこそがcare(ケア)の主柱となるからです。女性の渉外担当者も徐々に増えていて、女性ならではの物腰の柔らかさ・気づき・きめ細やかさなどを活かして活躍しています。
他にも、2020年10月より職員全員が推進活動内容や取引先企業の情報を共有できる「CACS-NET(カシスネット)」というシステムを稼働し、お客様の歴史や経営に対する考え方、今後の展望など定性的な情報も含めて管理・共有するようにしています。
また、営業店の職員をお客様の企業に派遣して業務を体験させる「丁稚(でっち)研修」を行っており、例えば農業であれば草刈りや収穫などを一緒に行うことで親交を深め、お客様側の目線に立ち、理解を深めていけるよう取り組んでいます。
――日頃の訪問活動や丁稚研修など、取引先との関係性を何よりも重視しているのだなと強く感じます。もう一方のcure(キュア)ではどのような活動を行っているのですか?
畑中:
~『お金を貸す前に知恵を貸す』~
cure(キュア)は、治療や治癒という意味で、例えば資金の支援や経営改善、事業再生、事業承継、資産運用など、経営における課題に対して専門的な知識や知恵を授けたり、改善に向けたアドバイスを提供したりすることを掲げています。
このcure(キュア)を高めていくことが当金庫の現在の課題であり、その対策として公的資格取得者、検定試験合格者へ奨励金を支給したり、試験へ挑戦する職員でグループをつくりグループマッチを行ったりと、自己啓発を促す工夫をしています。
これまでは、推奨資格として財務検定とファイナンシャルプランナー(FP)を導入していましたが、具体的な経営相談や提案を行うなど実践的な営業活動に活かしていくために、2019年度より中小企業診断士を目指すステップという位置づけで『企業経営アドバイザー』を加えました。
――企業経営アドバイザーを取り入れていただきありがとうございます。現在、貴庫での受験数者や合格者数はどのくらいでしょうか?
畑中:
現在、資格取得者は8名。合格者がでた際には庫内報に掲載するなどアナウンスをして、今ではだいぶ認知度も上がり、推奨資格の一つとして理解されているなと感じます。これからはもっと受験者が増えていくと思います。
――では、実際に資格を取得された下總さんにお伺いします。まず資格を受験しよう思われた理由を教えていただけますか。
下總由衣さん(以下、敬称略):
私は現在、地域支援室という部署で地域の産業振興を目的とした中小企業の販路開拓支援や、専門的課題を抱えた企業と大学等研究機関とのマッチングを担当しているのですが、これまで融資や渉外を担当した経験がなかったので、経営者の方と対話する際に、金融機関としてきちんとしなきゃ!と意気込む反面、対話の着地点がわからず不安を感じていました。そのようなタイミングで企業経営アドバイザーの受験者を募集していることを知り、未経験を理由に尻込みするよりは、勉強して知識を身に着けた方がよっぽどいいと考え、また内容を見たときに「これ知りたかった!」ということばかりでしたので、迷わず手を挙げました。
――学びは実務に活かされましたか?
下総:
とても活かされています!まず、気後れすることなく企業訪問が出来るようになりました。これまで経営者と対話する際は、話の流れで漠然としたアドバイスをしていましたが、資格勉強後は経営者が何を伝えてくれているのかを理解し、的確に質問をして課題を発見し、どのような支援をすれば良いかがわかるようになりました。取引先の方からも、私がしっかりと質問するので、理解してくれていることが伝わってきて信頼感につながったと言っていただきました。
企業経営における一通りの知識を得たことで自信につながり、何を言われても対応できるようになったことは良かったです。
――学習上大変だったこと、また企業経営アドバイザーのおすすめポイントを教えてください。
下総:
私はこれまで窓口業務と本部業務ばかりで融資や渉外の担当経験がなかったので、そもそも知らない用語や指標も多く、それらを調べることから始まりましたので、人より余計に学習時間を費やしてしまったかなと思います。しかし、一気に詰め込むと忘れてしまいますし、自身のルーティンに組み込んで細く長く勉強を継続できたことは良かったと思います。
学んでいて印象的だったのは「生産管理」です。企業を訪問すると、経営者の方と事務所でお話しさせていただくことが多く、製造の現場に行く機会があまりなかったので、ものづくりの話をされてもなかなかイメージが湧かなかったのですが、勉強後はお客様のお話を聞いて、こうすれば生産性が上がるんじゃないかな、などと考えられるようになりました。
また、「対話力向上講習」では、経営者とよりスムーズに、より深い内容の対話をするために必要なスキルを身につけることができました。
私のような融資・渉外担当未経験の金融機関職員でも、じっくり時間をかけてコツコツと学習に取り組むことでなんとか合格できましたので、企業訪問をしている方にはぜひチャレンジしていただきたいと思います。
――最後に貴庫の今後の展望や抱負を教えてください!
畑中:
当金庫が掲げる人材を増やしていくためには、前述したとおりcure(キュア)が課題ですので、資格の合格率も大事ですが、まずは受験率を上げて「学ぶ姿勢」を保ちながら、一人でも多くの職員に専門的な知識を身につけてほしいなと思います。そして、care(ケア)とcure(キュア)を併せ持った職員を一人でも多く育成して、地域に貢献し、たくさんの笑顔を生んでいきたいです。
来年度に創立100周年を迎えますが、これからもお客様と一緒に歩んでいけるよう尽力してまいります。
――ありがとうございました!
青い森信用金庫の今後のご活躍を祈念しております。