ごえんをつなぐコラム

【相続】遺産分割前でも、単独で引き出せる金額は?

DATE25.02.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回のテーマは、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」です。

亡くなった人の口座からは、勝手に、お金は引き出せない

銀行は顧客が死亡したことを知ると、即、その口座を凍結します。
口座が凍結されてしまうと、たとえ遺族であっても 遺産分割前に単独でお金を引き出すことはできなくなってしまいます。

銀行にしてみれば遺産分割協議がまとまらないうちにお金を払い戻してしまい、それが原因で相続トラブルに巻き込まれては困りますから。

ただ、そうなると、すぐにでも葬式費用や当面の生活費が必要となる場合に困りますよね。銀行によっては数十万円程度であれば払い戻しに応じることもあったでようですが、それはあくまでも慣例であって、その判断や金額は銀行次第でした。

 

そこで2019年7月、遺産分割前の払戻しのルールが法的に定められました。

それが「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」で、この制度によって相続人間の遺産分割協議がまとまる前であっても、各相続人が単独で、亡くなった人の口座から一定金額まで引き出せるようになったのです。

いくらまでなら、引き出せる?

たとえば、亡くなったAさんはX銀行の口座に600万円の残高があったとしましょう。
そして、Aさんの相続人は配偶者・長男・長女の3人だとします。

この場合、配偶者は100万円まで、長男・長女はそれぞれ50万円までであれば、遺産分割前であっても単独で口座から引き出すことができるのです。

 

ちなみに、各相続人が単独で引き出すことができる金額は以下のとおりです。

相続開始時の残高×1/3×各相続人の法定相続分
※但し、1金融機関につき150万円が上限

 

ですので、それぞれの金額の計算式は、以下のとおりとなります。

配偶者:600万円×1/3×1/2(配偶者の法定相続分)=100万円

長男 :600万円×1/3×1/4(長男の法定相続分) = 50万円

長女 :600万円×1/3×1/4(長女の法定相続分) = 50万円

 

上記金額までであれば、遺産分割の話し合い前でも各人がそれぞれ自由に引き出せるわけですから、これは助かりますよね。話し合いがこじれて時間がかかるような場合には、とくにありがたい制度でしょう。

ちなみに、上記を超える金額であっても、家庭裁判所に申し立てて、その必要性が認められた場合には引き出すことができます。

相続放棄は、できなくなる可能性がある

ただし、口座からお金を引き出すことで、相続放棄ができなくなってしまう可能性があるので要注意です。

葬式費用などの支払のためであればともかく、そのお金を生活費や私的な目的に使った場合には、相続放棄ができなくなってしまうと考えられます。

亡くなった人に多額の借金がある場合には、相続放棄ができないとなるとその借金を背負うこととなってしまいます。
遺産分割前に単独で引き出せるからと言っても、その判断は慎重に行う必要がありますね。

 

ちなみに、遺産分割前に引き出された金額は、その引き出した相続人が取得した遺産として、遺産分割の対象となります。
ですので、後の遺産分割協議にて、遺産の一部をすでに受け取ったものとして調整することとなります。

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

 

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