ごえんをつなぐコラム

【相続】遺産には、最低限の「取分」がある

DATE25.01.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回のテーマは、「遺留分」です。

不公平な遺言書だったら?

母親が亡くなり(父親はすでに死亡)、相続人となる3人の子供に対して遺言書が残されました。
その遺言書によると、遺産(現金)の6,000万円は以下の配分となっていました。

 

  • 長男 3,000万円
  • 二男 3,000万円
  • 三男      0円

 

母親と折り合いが悪かった三男は、自分の取分は少ないだろうなと薄々とは感じていたものの、この遺言書を見て、まさかまったく遺産を受取れないとは、と驚きます。

そして長男と二男に対して、「取分ゼロとは酷い、僕にも少しは遺産を分けてくれないか」と訴えます。
しかし、長男と二男は「遺言書の内容は絶対だよ」「母の意思はしっかり受け取らないと」と、まったく取り合ってくれません。

この場合、遺言書通り三男はまったく遺産を受取れないのでしょうか?

最低限の遺産の取分

いいえ、この場合三男は、「最低限の遺産の取分」として、遺産のうち1,000万円は受け取ることができます。
そして、この「最低限の遺産の取分」のことを遺留分といいます。

この遺留分は、相続における重要ワードでありながら意外と知られていない(きっちりと理解されていない)ことも多く、今回、あらためてそのポイントを説明させていただきます。

遺留分権利者

遺留分(最低限の遺産の取分)の権利を持つ者は限られています。それは、配偶者、被相続人の子およびその代襲相続人ならびに直系尊属で、すなわち兄弟姉妹以外の相続人に限られるのです。

ちなみに、相続放棄をした者や、相続欠格・廃除によって相続権を失った者は除きます。
ですので今回のケースでは、三男は遺留分権利者となります。

遺留分の割合

各遺留分権利者の遺留分の割合(最低限の取分)は、総体的遺留分×法定相続分で計算されます。
総体的遺留分とは、遺留分権利者全体の取分のことです。

以下のように、その相続人のパターンによって、遺産全体の1/3もしくは1/2となります。

 

  1. 直系尊属のみが相続人である場合 1/3
  2. 「1.」以外の場合         1/2

 

今回のケースでは②のパターンなので、総体的遺留分は1/2となります。

そして、三男の法定相続分は1/3なので、三男の遺留分の割合(最低限の取分)は1/6となり、その金額は以下のように1,000万円となるのです。

6,000万円×「総体的遺留分(1/2)×法定相続分(1/3)=三男の遺留分(1/6)」=1,000万円

遺留分侵害額請求権

遺留分は、黙っていても受け取ることができません。
相手に対して「私には遺留分があるので、その分は支払ってね」と主張する必要があるのです。

その相手とは、受遺者(遺言により財産を受け取った人)や受贈者(生前に財産を受け取った人)となるのですが、今回のケースでは長男と二男となります。

 

なお、今回のように相手が複数いる場合には、「受遺者(受贈者)が受け取った目的物の価額の割合に応じて負担する」ことが原則なので、遺言により同額(3,000万円)を受け取っている長男と二男に対して、それぞれ500万円ずつ請求することになります。

あと、遺留分を請求できる権利(遺留分侵害額請求権)は、以下の場合には時効等により消滅するので注意が必要です。

 

  • 遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する遺贈等があったことを知ったときから1年間経過したとき
  • 相続開始のときから10年間経過したとき

 

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

 

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