ごえんをつなぐコラム

【年金】公的年金の障害年金制度について

DATE25.01.15

新しい1年がスタートしました。この年金検定コラムは、年金について身近に感じていただけるようなテーマを毎月取り上げています。多くの方に、年金について興味を持っていただきたい!という思いで毎月更新しています。2025年もよろしくお願いいたします。

 

私が日々年金相談をお受けしている中で、最近とくに多いな…と感じるのが「障害年金」に関する相談です。

障害年金は、病気やケガにより働くことができないような、日常生活に支障が出てしまう場合に一定の要件を満たすことで支給されるもので、障害基礎年金、障害厚生年金という年金形式で支給されるものが一般的です(障害手当金という一時金もあります)。

障害基礎年金とは、障害の原因となった病気やケガではじめて病院に行った日(=初診日)が国民年金に加入している期間(※)、または20歳前の年金未加入期間である場合に支給されるものです。
※日本に住む60歳以上65歳未満の未加入期間中も含む

障害厚生年金、障害手当金とは、初診日において厚生年金保険に加入している場合に支給されるものです。

障害年金の支給要件、請求方法

障害年金が支給されるのは、原則として年金制度に加入し、保険料を払っている現役世代(=被保険者)です。具体的には、次の3つの要件を満たしてはじめて障害年金が支給されることになります。

 

  1. 初診日において、原則として、「国民年金や厚生年金保険の被保険者」であること
    ※先天性疾患など、20歳になる前に初診日がある場合は、20歳前傷病による障害基礎年金の対象となる
    ※日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の年金未加入期間中も対象となる
  2. 初診日の前日において保険料納付要件を満たしていること
  3. 障害認定日において障害等級に該当していること

 

障害年金の請求方法は、大きく分けて障害認定日時点の状態で請求する「障害認定日請求」と、現在の状態で請求する「事後重症請求」の2つがあります。

障害認定日は、原則として、初診日から1年6カ月経過日です。1年6カ月経過日よりも前に症状固定(※)がある場合には、その固定日が障害認定日となります(人工透析療法を行っている場合は、透析開始日から3カ月経過日、ペースメーカーの装着日など)。
※症状は依然として残っているものの、これ以上治療を続けても改善が見込まれないと判断すること

障害認定日請求では、障害認定日時点現症の診断書をとり、障害状態に該当するかどうかの審査が行われます。

障害認定日に程度が軽かった傷病が、後々重症化した場合に行うのは「事後重症請求」といいます。これは、請求する現在の状態で診断書をとり、請求日時点で障害等級に該当するかどうかの審査が行われることになります。

障害年金の請求対象となる傷病はどんなものがある?

今、障害年金で最も多い請求傷病は、「精神疾患」です。
統計(※)によると、新規裁定者のうち69.5%が精神障害・知的障害による請求です。
※障害年金業務統計(令和5年度決定分)より(令和6年9月 日本年金機構)

精神障害、知的障害の傷病には、うつ病、双極性障害、統合失調症、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、知的障害といったものがあります。

また、このほか内部障害系では、腎臓系疾患(腎不全など)、心疾患、糖尿病、解離性大動脈瘤、がん、外部障害系では、手足の切断や機能障害などがあります。

障害年金の対象となる傷病は限定されているわけではなく、病気やケガによりどのような障害が出ているか、それにより、日常生活や仕事にどのような影響が出ているかで障害等級が決まります。障害等級は、障害基礎年金の場合12級、障害厚生年金の場合1級~3級となっており、実際には請求の際に提出する「診断書」や「病歴就労状況等申立書」により審査が行われます。障害等級については、以下の目安を参考にしてみてください。

 

【障害に該当する程度】

出典:日本年金機構ホームページより

 

なお、障害年金の手続きで使用する診断書は様式が決まっていて、現在は次の8種類です。症状により使用する診断書が異なりますし、症状が複数ある場合は複数の診断書を取得することもあります。

 

  1. 精神障害・知的障害(精神の障害)
  2. 呼吸器疾患
  3. 循環器疾患
  4. 腎疾患・肝疾患・糖尿病
  5. 血液・造血器・その他
  6. 聴覚・鼻腔機能・平衡機能、そしゃく・嚥下機能
  7. 肢体

 

障害年金の請求のために必要な書類はたくさんあります。請求の際は、一度最寄りの年金事務所や社会保険労務士に相談してみましょう。

 

社会保険労務士
後藤 朱

 

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