【相続】タダで土地を借りたときの財産評価
DATE24.12.23
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回のテーマは、「使用貸借による、土地の評価」です。
無償での貸し借りと、有償での貸し借り
無償(タダ)でモノを貸し借りすることを、使用貸借と言います。
それに対して、有償でモノを貸し借りすることを賃貸借と言います。
そしてその貸し借りの目的物が土地の場合、それが賃貸借なのか使用貸借なのかによって、その貸主もしくは借主が死亡したときの財産評価が異なります。
賃貸借の場合
まず、相応の権利金や地代を支払っての土地の貸し借り(賃貸借)のケース。
仮に、自用地評価額(※)が1億円の土地を賃貸借により貸し借りしていた場合、それぞれの財産評価は以下のようになります。
※自分で利用している土地(他人が利用する権利がない土地)の評価額
- 貸主の死亡(土地) 3,000万円(「貸宅地」評価額(1億円×(1-70%))
- 借主の死亡(土地の使用権) 7,000万円(「借地権」評価額(1億円×70%))
※借地権割合は70%とする
上記の通り、他人に貸している土地の評価は「貸宅地(自用地評価額×(1-借地権割合))」となります。
自分の土地であっても、他人に貸している状態なので使い勝手は悪くなる分、その評価は下がることになります。
自用地評価額1億円が3,000万円になるのですから、これはかなりの評価減ですね。
また、借主の権利は「借地権(自用地評価額×借地権割合)」として評価されます。
賃貸借の場合借主は相応の権利金や地代を支払っているわけですから、借主が死亡してもその土地の使用権は「借地権」という相続財産として、相応の金額で評価されるのです。
使用貸借の場合
それに対して、権利金や地代を支払わずの土地の貸し借り(使用貸借)のケース。
前例と同じく、自用地評価額が1億円の土地を使用貸借により貸し借りしていた場合、それぞれの財産評価は以下のようになります。
- 貸主の死亡(土地) 1億円(自用地評価額)
- 借主の死亡(土地の使用権) 0円
上記の通り他人に貸している土地であっても、それが使用貸借によるものであれば、その貸主が所有する土地の評価額は「貸宅地」ではなく「自用地評価額」で評価されます。
すなわち、その評価額は1億円のまま変わりません。
なお、借主が死亡した場合には、原則として使用貸借は終了します。
ですので、使用貸借による土地の使用権は受け継がれることはありませんし、そもそも使用貸借による土地の使用権の評価は0円とされています(下記「一口メモ」参照)。
[一口メモ]
使用貸借について、「本来であれば支払うべき権利金や地代を払わずに土地を借りているので、これは(借主は貸主から)借地権相当額の贈与を受けたことになるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、使用貸借による土地の使用権の価額は0円なので、贈与税は課されることはないのです。
親の土地に、子が家を建てるケースに注意
ところで、「親の土地の上に子が家を建てて住んでいる」ことは珍しくありません。
これはすなわち子が親の土地を借りているわけですが、その際、権利金や地代を支払っているケースは少ないでしょう。
であれば、これは賃貸借ではなく使用貸借となります。
ちなみに、いくらか支払っていると言ってもそれが少額(固定資産税程度)であれば、やはり使用貸借となります。
その場合、親が死亡してその借りている土地を相続する際には、(評価額が下がる)貸宅地ではなく自用地としての評価のままであることは、しっかり認識しておく必要があります。
それを認識しておらずに「人に貸している土地は、評価額が下がる」と思い込んでいると、いざ、相続が発生したときに慌てることになりかねないので、気を付けましょう。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏