【年金】国民年金保険料の免除・納付猶予制度について
DATE24.10.17
令和6年9月20日に行われた社会保障審議会の年金部会で、国民年金保険料の納付猶予制度についての見直しが議論されていました。今回はそれを受け、国民年金保険料の免除・納付猶予制度について見ていきたいと思います。
国民年金第1号被保険者(自営業者等)は、毎月保険料を納付しなければなりませんが、所得が減少してしまい保険料の支払いが困難になった場合、申請を行うことで保険料の納付が免除・納付猶予となる制度があります。
保険料の免除・納付猶予制度には、①全額免除、②4分の3免除、③半額免除、④4分の1免除、⑤納付猶予の5つの区分があります。
①~④は、本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が基準額以下の場合に申請を行い、承認されると免除となります。
⑤の納付猶予は、50歳未満で本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が基準額以下の場合に申請を行い、承認されると納付が猶予されます。納付猶予には、世帯主の前年所得の基準がないことがポイントです。
なお、免除と納付猶予については、将来受け取る老齢基礎年金の年金額を計算する際に①~④の免除期間には国庫負担が適用され、⑤の納付猶予には国庫負担が適用されない、という大きな違いもあります。
たとえば、全額免除期間は国庫負担により、本来納めるべき保険料の2分の1は老齢基礎年金の年金額に反映されます(平成21年4月以降の期間)。
一方、納付猶予期間は老齢基礎年金の年金額の計算にまったく反映されない期間となります。納付猶予期間は、「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を受け取るために必要な10年の受給資格期間にだけカウントされることになります。
申請免除や納付猶予を受けた期間については、10年以内の期間であれば後で追納することができます。納付猶予については、追納をしないと将来の老齢基礎年金の年金額にはまったく反映されない期間となってしまいます。
納付猶予制度は平成17年4月から10年間の時限措置でスタートした制度で、当初は30歳未満を対象とした若年者納付猶予制度という名称でした。これが法改正により、平成28年7月からは対象者が30歳以上50歳未満の方にも拡大し、制度の期限も改正により令和12年6月まで延長されました。
この納付猶予制度について、令和12年6月までとされた時限措置を延長すべきかどうか、という点などが先日の年金部会で議論されていました。また、納付猶予制度は世帯主の前年所得が影響しないことから、世帯主に高い所得があり、十分な支払い能力がある場合でも、本人の所得が基準額以下であれば納付猶予の対象となります。
そこで、将来の年金受給につなげるためにも、世帯主に一定額以上の所得がある場合は納付猶予の対象外とするのはどうか…等の案も出ていました。これに対し年金部会の中では、納付猶予制度で新たに世帯主の所得要件を設けることについては、慎重に検討すべきという意見も多く上がっていました。
どのような結論となるのか現時点ではまだ確定していませんが、今後の議論に注目していきたいと思います。
今回取り上げた納付猶予制度に関する資料は、次の厚生労働省のホームページから確認することができます。
参照:第18回社会保障審議会年金部会|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
年金部会の資料は制度が創設された背景等もまとまっていて、年金制度への理解を深めるのにとても役立ちます。年金検定の受験を検討している方も、興味があればぜひ見てみてください。
社会保険労務士
後藤 朱