ごえんをつなぐコラム

【相続】遺言の撤回について

DATE24.08.23

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回のテーマは「遺言の撤回」です。

遺言は撤回できるのか?

結論から言えば、遺言はいつでも自由に撤回することができます
遺言を作った後で「気が変わった」「状況が変わった」ということなど、いくらでもありますからね。

そして、遺言を撤回する権利は放棄する(させる)ことができません。

遺言を撤回しない旨の意思表示は無効なのです。

ですので「この遺言は絶対に撤回しない」と宣言していようが、遺言に書いていようが、作成した遺言は自らの意思で、いつでも自由に、その全部または一部を撤回することができるのです。
もちろん、公証役場で作成される公正証書遺言であっても撤回することができます。

遺言作成に躊躇している人も、この「撤回する権利」を知れば、幾分遺言作成のハードルは下がるのではないでしょうか?

遺言を撤回するには?

遺言の撤回は、原則として遺言の方式によるものとされています。
すなわち新たな遺言を作成して、その遺言にて前に作成した遺言を撤回する旨を記載することで、前の遺言を撤回することになります。

その際、新たに作成する遺言の種類(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)は問いません。
前の遺言と同じ種類でなくても大丈夫です。

たとえば、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回してもよいですし、自筆証書遺言を秘密証書遺言で撤回してもかまいません。

遺言の撤回とみなされるケースとは?

ちなみに「新たな遺言にて、前に作成した遺言を撤回する旨を記載する」ことがなくても、以下のケースにおいては遺言を撤回したとみなされます

 

⓵前の遺言と後の遺言が抵触(矛盾)する場合

②遺言者が遺言の後に、遺言の内容と抵触(矛盾)する法律行為をした場合

③遺言者が故意に遺言書を破棄した場合

④遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄した場合

 

ちょっと漠然としていて分かりづらいですよね。
なので、具体的な事例で考えましょう。

たとえば、「車は長男に与える」旨の遺言を作成した場合では、以下のケースがその内容部分を撤回したとみなされます。

 

⓵後の遺言にて、「車は長女に与える」と書いた

②車を友人に売却した

③故意に遺言書を破棄した
 ※ただし、その遺言書が「公正証書遺言」の場合は原本が公証役場に保管されているので、手元の正本を破棄しても撤回とはならない。

④車を廃車にした

 

ただし、これらの「みなし撤回」は状況等によってはその判断が難しく、トラブルになる可能性があります。

ですので、遺言の撤回をするのであれば原則通り「新たに遺言を作成して、その遺言でハッキリ“撤回する”旨を明記する」ことが望ましいですね。
そして、新たに作成する遺言は、できれば公正証書遺言が安心でしょう。

撤回された遺言は復活しない

撤回された(または撤回されたとみなされた)遺言は、原則として復活することはありません。
すなわち、「遺言の撤回をさらに撤回する」ことがあったとしても、すでに撤回された元の遺言はその効力を回復することはないのです。

ただし例外として、遺言の撤回(1回目の撤回)が詐欺や脅迫によるものだった場合には、撤回の撤回(2回目の撤回)によって、撤回された遺言は復活します。

また、遺言者の意思が「元の遺言の復活を希望するものであることが明らか」な場合にも、例外として元の遺言が復活するという判例があることも、一応記しておきます。

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

 

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