ごえんをつなぐコラム

【年金】遺族年金制度の改正について

DATE24.08.20

現在、次期年金制度の改正について厚生労働省の社会保障審議会年金部会で議論が進んでおり、今年度中に改正法案がまとめられるということです。

先月の7月30日に実施された年金部会では、遺族年金制度について議論されていました。議論中の内容ですが、今回はどんな改正案が検討されているのか少し取り上げてみたいと思います。

参照:第17回社会保障審議会年金部会|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

遺族年金制度の男女格差について

遺族年金について、現行制度では男女格差があるという点が問題視されていて、この格差を解消するための改正が検討されているところです。

 

現行の遺族厚生年金の場合、残された遺族が妻の場合は「年齢要件なし」「40歳以上65歳未満で、子(※)のない妻には中高齢寡婦加算あり」となっていますが、夫の場合は年齢要件があり、「死亡当時55歳以上であること」が要件とされています。
しかも受給開始は原則60歳からです。また、夫には中高齢寡婦加算も支給されません。

なお、中高齢寡婦加算とは夫の死亡当時に子(※)がいない妻、遺族基礎年金を受給できなくなった妻が40歳から65歳になるまでの間に受け取ることができる遺族厚生年金への加算金です。

※死亡の当時、18歳到達年度末日までの間にある子、または20歳未満で一定の障害状態にある子のことです。

 

国民年金の独自給付としてある寡婦年金も、夫により生計維持されていた妻だけに支給されるものです。

ちなみに寡婦年金とは、第1号被保険者の保険料納付済期間、保険料免除期間が10年以上あり、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがない夫が亡くなった場合、妻が60歳から65歳の間支給されるものです。10年以上の婚姻関係があることが必要です。

 

現在は、夫婦共働き世帯も増え、働く女性の増加、家族の形も多様化している中で、遺族年金の制度も男女差を埋めるための改正案が検討されています。

具体的案として、20代から50代に死別した「子のいない配偶者」に対する遺族厚生年金を「5年間の有期給付」に変えていくことが検討されています。

 

現行制度でも30歳未満の子のない妻への遺族厚生年金は「5年間の有期給付」となっていますが、①有期給付の対象年齢を段階的に引き上げていくこと、②新たに60歳未満の夫への有期給付を創設すること、等が検討されています。また、中高齢寡婦加算についても見直しが行われることが検討されています。

また、寡婦年金についても受給権が発生する年齢を段階的に引き上げ、最終的には廃止するという案も示されています。

この内容はニュースでもたくさん取り上げられていますので、日々年金のご相談をお受けしている中でも、「私の遺族年金はどうなるんですか?」というご質問をいただくことが多々あります。

 

年金部会の資料によると、子がいる世帯としてみた場合の遺族厚生年金、高齢期(60代以上)の夫婦の一方が死亡したことにより発生する遺族厚生年金については、現行制度の仕組みを維持するとされていて、今回見直しの対象は、20代から50代で子のない配偶者への遺族厚生年金です。

「有期給付化」が仮に実施されたとしても、段階的に対象年齢が引き上げられていく予定で緩やかに実施されていく見通しであること、また、有期給付化に伴いさまざまな配慮措置も設けられることが検討されているようです。

今後の動向に注目していきましょう。

 

社会保険労務士
後藤 朱

 

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