【企業経営】心理的安全性を確保する(その1)
DATE24.07.01
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている中小企業診断士の三枝元です。
経営者であれば、誰もが組織の中で気兼ねなく自分の意見を言える環境が必要だと言います。しかしながら、知らず知らずのうちに社員が自由に意見を言えなくなる雰囲気となっている場合も多いです。
そこで、今回は「心理的安全性」について2回に分けて取り上げます。
■心理的安全性とは
企業やチームの中で、「対人リスクを恐れずに思っていることを気兼ねなく発言できる、話し合える状態」のことを心理的安全性が確保されていると言います。ハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授がその著書、「チームが機能するとはどういうことか」(英治出版)で主張して以来、日本でもすっかり定着した感があります。
心理的安全性と、組織(あるいは経営者や管理者)が社員に求める責任(業務目標)により、組織の状態は次の4つのパターンになります。当然ながら、心理的安全性が高く責任も高い状態が最も望ましいです。
○心理的安全性も責任も低い場合(無関心)
社員は自分の仕事に無関心になりがちで、楽をしがちになります。
○心理的安全性は高く責任は低い場合
社員は互いに楽しく仕事をして陽気であるが、挑戦意欲が低く学習やイノベーションは行われない。コンフォートゾーン、つまりぬるま湯的です。
○心理的安全性が低く責任は高い場合
管理者が高いパフォーマンス基準を社員に求めすぎ、その結果、社員に不安を感じさせています。社員による新しい提案や試行錯誤、支援の要請を行いにくくしています。
○心理的安全性が高く責任も高い場合
社員間の協働や相互学習を促しています。
■心理的安全性を測るためのチェックポイント
経営者や管理職の方は、部下が次のように感じていないか考えてみるとよいでしょう。
①部下が「自分は無知だと思われる不安」を感じていないか?
②部下が「自分は無能だと思われる不安」を感じていないか?
③部下が「自分は邪魔だと思われる不安」を感じていないか?
④部下が「自分は批判的だと思われる不安」を感じていないか?
■心理的安全性だけでは緩くなる
一方でエドモンドソン教授は、心理的安全性は大切ではあるが、目標設定や責任範囲が不明確ではただの緩いチームになってしまい、チームの目的や目標を実現することはできないと言います。
実際に社員同士は仲が良いのですが、どこか危機感がなかったり、ぬるま湯につかって変化を恐れていたりするような雰囲気の組織をよく見ます。過度な緊張感は問題ですが、ある程度の緊張感は組織の成長のために必要です。
心理的安全性は、仲良しクラブを作るためのものではありません。高い組織目標を実現するために、組織のメンバーが自分の思ったことをきちんと言える環境をつくることが重要だということを忘れてはいけません。
参考:エイミー・C・エドモンドソン「チームが機能するとはどういうことか」英治出版
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元