ごえんをつなぐコラム

【企業経営】男女間の収入格差の要因は何?(その1)

DATE24.05.01

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

今回は男女間の収入格差について、2023年にノーベル経済学賞を受賞した米ハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディン氏の研究を紹介しながら考えたいと思います。

 

男女間の収入格差というと、単純に女性は男性と比べて軽視されているという議論に行きがちです。しかしながら、ゴールディン教授の研究によれば、まったく同じレベルの仕事であれば男女で収入格差はなく、格差が生じるのは、「育児」と「貪欲な仕事」の存在であるといいます。

 

子供が生まれた場合、女性は育児のために離職や労働時間を短縮することで収入が下がります。その後、仕事に復帰しますが、職務年数に応じて収入が右上がり傾向の男性には及びません。これは、女性の労働力率のM字カーブとしてよく知られています。

 

一方、男性は、家庭を含むプライベートより、業務への集中が優先され、労働の柔軟性に欠ける「貪欲な仕事」に専念します。「貪欲な仕事」には、「時間のプレッシャーがある」「他との調整の必要性が高い」「人間関係の構築の必要性が高い」「個人で意思決定できない」という特徴があります。

 

このような仕事は、長時間働くほうが生産性が高くなります。複雑な仕事は、細切れの時間でやるよりも、一定の時間を取って集中してやったほうが効率的であるのと同じです。実際、MBA、法律、薬学の学位の卒業生のデータを調べると、MBAと法律の学位の卒業生は、労働時間が長いほど時間あたり賃金も高くなるといいます。これは、「貪欲な仕事」に従事しているからです。一方、薬剤師の仕事は、労働時間の柔軟性が高く、時間あたり賃金は変わりませんでした。

 

「貪欲な仕事」は、一般的に育児負担が低い男性が担い、職務年数で生産性を高めやすいため、昇進可能性や収入が高くなりますが、女性の場合は、そのような状況に身を置きにくいでしょう。調査によれば、技術や科学系といった比較的労働時間の柔軟性が高い仕事では、男女間の格差がなく、事務系や医療系などの「貪欲な仕事」では格差が大きいとのことです。

 

以上から、収入格差をなくすためには、まずは男性が「貪欲な仕事」に就くべきだという固定観念を捨てること、女性が就きやすい労働時間が柔軟な仕事での生産性を高めることが求められることになります。

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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