【相続】遺産の分け方 ~遺言書があるとき、ないとき~
DATE24.04.22
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
当コラムでは、4年以上にわたって相続の知識をお伝えさせていただいておりますが、今回で50回目となります。
さて、そんな記念すべき50回目のテーマは、「遺言書があるとき・ないとき」です。
【遺言書の有無で、分割方法は異なる】
相続において、一番気になること・・・それは、「亡くなった人の遺産を、どう分けるのか(誰が、何を、どれだけ、取得するのか)」ではないでしょうか?
そして、その方法は、遺言書があるのか、ないのか、によって異なります。
遺言書があれば、基本的には、その遺言書に書かれた通りに分けます。
これを指定分割といい、後述の協議分割に優先します。
遺言書がなければ、相続人同士の話し合いで、遺産を分けることになります。
これを協議分割といい、相続人全員が同意すれば、どのような分け方でもかまいません。
ちなみに、民法で定められた法定相続分(※)とは、あくまでも目安です。
指定分割・協議分割、いずれにおいても、必ずしも法定相続分に従う必要はなく、あくまでも分割の目安となるものです。
※たとえば、相続人が妻・長男・長女の3人であれば、それぞれ1/2・1/4・1/4
【遺言書の内容は、絶対ではない】
さて、ここで鋭い人は気付いたかもしれませんね。それは、前述の「遺言書があれば、~」においての「基本的には」との文言。
遺言書があれば、「絶対に、遺言書に従わなくてはいけない」と誤解している人も多いのですが、それは「絶対」ではないのです。
そうです、遺言書があるからといって、必ずしも、遺言書通りに分ける必要はないのです。
遺言書通りに分けなくても、とくに罰則はありません。
とはいえ、遺言書の内容は、被相続人の最終意思表示ですから、それはもちろん、最大限尊重されるべきではあるでしょう。
しかし、その内容が、遺された相続人にとって、必ずしも有益なものとは限りません。
たとえば、すでにマイホームを保有している長男に自宅を相続させたり、車に興味のない長女に車を相続させたり・・・など、言葉は悪いですが、被相続人の独り善がりの可能性もあるわけですから。
そこで、相続人全員が同意をすれば、遺言書があったとしても、あらためて話し合って、遺言書とは異なる、遺産の配分等を決め直すことができるのです。
【遺言書があっても、あらためて話し合いができる条件】
ところで、遺言書があるにもかかわらず、あらためて話し合いをするためには、相続人全員の同意以外にも、以下の条件があります。
・受遺者がいる場合には、受遺者全員も同意していること
相続人以外にも、受遺者(遺言書によって遺産を取得する人)がいる場合には、当然ながら、その受遺者全員の同意も必要となります。
・遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者も同意していること
遺言執行者(遺言書の内容を実現するために、諸々の手続きを行う人)が指定されている場合には、その遺言執行者の同意も必要となります。
・遺言書にて、遺産分割協議が禁止されていないこと
遺言書にて、遺産分割協議が禁止されている場合には、あらためて遺産分割協議をすることはできません。
なので、相続人の1人が「私の相続分が少ないので、あらためて話し合いたい」と言っても、相続人や受遺者全員の同意が取れないなどで、あらためての話し合いができなければ、その場合はやはり、遺言書の内容に従うこととなります。
ただ、遺言書による遺産取得額が、法定相続分を大幅に下回るような場合で、どうしても納得がいかないときは、遺留分(※)を主張することとなります。
※一定の相続人に保障された、最低限の遺産相続分
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏