【相続】相続時精算課税制度にも、「基礎控除」ができた!
DATE23.12.22
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回は、令和5年度税制改正で創設された、「相続時精算課税制度の基礎控除」がテーマです。
【相続時精算課税制度とは?】
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母・祖父母等から、18歳以上の子・孫等への贈与に対して適用することができ、以下の条件で、贈与税額が計算されます。
・特別控除額2,500万円(累計額)
・税率20%(一律)
たとえば、相続時精算課税制度を使って3,000万円を贈与した場合、贈与税額は以下のとおりです。
(3,000万円-2500万円)×20%=100万円
それに対して、通常の贈与税(暦年課税)では、以下の条件で計算されます。
・基礎控除額110万円(年間)
・税率10~55%(贈与額に応じて税率は上がる)
通常の贈与税では、3,000万円を贈与した場合、贈与税額は以下のとおりです(特例税率を適用)。
(3,000万円-110万円)×45%-265万円(控除額)=1,035.5万円
なんと、通常の贈与税の計算では、その贈与税額は、相続時精算課税制度の10倍以上です。相続時精算課税の節税効果は、相当なものですね。
【相続時精算課税の注意点】
さて、そんな節税効果抜群の相続時精算課税ですが、「相続時精算課税による贈与財産は、贈与者が死亡した際には、その相続財産に合算される」というルールがあります。
すなわち、前述のように贈与税が有利に計算できても、結局は「相続税の課税対象となる」わけです。
とはいえ、(詳細は割愛しますが)よほどの資産家でない限り、現実には相続税が課せられるケースは少ないので、そこはそれほど過敏になる必要はないでしょう。
それよりも、相続時精算課税で気にすべきは、以下の点なのです。
・特別控除額2,500万円は、累計額である
特別控除額2,500万円は、適用対象となる贈与者からの累計額なので、その贈与財産が2,500万円に達した後は、常に20%の税率が課せられます。
それに対して、通常の贈与税の基礎控除額110万円は毎年なので、コツコツと長期間にわたって贈与を続ければ、通常の贈与税の方が、非課税となる贈与税額が大きくなるのです。
・少額でも、贈与税の申告が必要
相続時精算課税による贈与は、その額に関係なく申告が必要となります。たとえ10万円の贈与でも申告が必要となるので、かなり面倒かもしれませんね。
それに対して、通常の贈与税では、年間110万円以下(基礎控除額以下)の贈与であれば、原則として申告は不要です。
上記の点がネックとなり、相続時精算課税に躊躇する人は少なくありません。
そして、いったん相続時精算課税制度を選択すれば、通常の贈与税(暦年課税)には戻れないことも、大きな障害とも言えるでしょう。
【相続時精算課税の「基礎控除」とは?】
さて、ここでようやく今回のテーマです。
そんな相続時精算課税のネックを改善すべく、令和5年度税制改正では、タイトルの通り、「相続時精算課税制度の基礎控除」が創設されたのです。
この改正により、特別控除額2,500万円とは別枠で、年間110万円の基礎控除額が使えるようになりました。
そのため、贈与財産が2,500万円に達した後でも、今後は、年間110万円までの贈与であれば、贈与税はかからないのです。
※改正前は、贈与財産が2,500万円に達した後は、常に20%の税率が課せられていました。
そして、この基礎控除額の年間110万円分は、相続財産にも加算しなくてもよいのです。
すなわち、基礎控除額の年間110万円は、贈与税も相続税もかからないのです。
また、基礎控除額の年間110万円までの贈与なら、贈与税の申告も不要となるので、相続時精算課税はグッと使いやすくなることでしょう(改正前は、少額の贈与でも申告が必要)。
これらの改正は、2024年1月からの贈与に対して適用されるので、もう目前ですね。
これまで、相続時精算課税の選択を躊躇していた人にとっては、この改正により、選択の幅が広がることは間違いないでしょう、
そして、最後に一つだけ。
この基礎控除額110万円は、あくまでも「相続時精算課税制度の基礎控除」であって、通常の贈与税(暦年課税)の基礎控除」とは別物です。
同一の贈与者については、相続時精算課税と通常の贈与は併用できませんので、誤解のないようにしてください。
そして、いったん相続時精算課税制度を選択すれば、通常の贈与税(暦年課税)には戻れない点には変更はないので、そこはやはり、気を付けたいところですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏