【企業経営】組織ぐるみの不正の背後にあるもの(2)
DATE23.12.12
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
前回は中古車販売会社を例に挙げ、組織ぐるみの不正について考えましたが、今回は組織内で行われる儀式の観点から考えていきたいと思います。
組織の儀式には、メンバーのコミットメントを高める効果があります。企業の入社式や社内イベントは、基本的に愛社精神を高めるねらいで行われるでしょう。
また、組織によっては、かなり過激な儀式が行われることがあります。たとえば、体育会の入部の儀式、マフィアの加入儀式などです。儀式が過激で理不尽なほど、メンバーのコミットメントが高まることが知られています。
その理由は、過酷な儀式を経験すると、その儀式(あるいはそれを実施した組織)を否定することが困難になるからです。もし、儀式への参加は意味がなかったと認めてしまうと、 「自分が愚かだった」と認めることになるからです。
いわゆるブラック企業と言われるところでは、朝礼の際に社員同士お互いの欠点を指摘したり、上司の説教を聞くときは正座で聞くなど、その会社独自のさまざまな儀式やルールがあります。このような慣習を潜り抜けた人は、いくら非合理的な会社側からの要求であっても、唯々諾々と受け入れるようになります。それを否定する(例:退職する)ことは、せっかくこれまで理不尽に耐えてきた自分の過去を否定することになります。
心の中に生じた矛盾を解消しようとする心理作用を「認知的不協和の解消」といいますが、まさにこれが当てはまります。人間誰しも不正には自己嫌悪を感じるものですが、その矛盾を解消するために、さも不正を行うことが正当なことであるかのように振舞うようになるのです。
このような組織の儀式も、前回触れた「個人が集団と一体化していくプロセス」に他なりません。
もちろん入社してすぐに退職した人には、そのような認知的不協和は発生しません。
中古車販売会社の件は、何も特殊なケースではありません。エリート集団であるはずの官僚組織や大企業の不正を見ると、同様の組織的な背景を感じてしまいます。同社のケースを「他山の石」として、組織の自浄作用につなげたいところですね。
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元