【相続】保険会社からお金を借りていた場合、保険金はどうなる?
DATE23.11.21
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回のテーマである「契約者貸付」とは、解約返戻金の一定範囲内で保険会社からお金を借りることができて、保障はそのまま継続できる便利な制度です。
【保険金額から自動的に差し引かれる】
以下の生命保険契約で、被保険者である夫が死亡して、死亡保険金が支払われることになったとします。
・契約者(保険料負担者):夫
・被保険者 :夫
・保険金受取人 :妻
・死亡保険金 :3,000万円
・契約者貸付金 :100万円(夫が生前、保険会社より借入)
この場合、死亡保険金受取人である妻は、死亡保険金3,000万円から、契約者貸付金100万円が差し引かれた2,900万円を受け取ることになります。
そして、この2,900万円がみなし相続財産として、相続税の課税対象となります(※)。
※受取人が相続人の場合、一定の非課税額あり
【相続放棄をしている場合どうなる?】
では、ここからが本題です。
それでは、妻が相続放棄をしている場合はどうなるのでしょうか?
順を追って説明しましょう。
まず、相続放棄をした人でも死亡保険金受取人となっていれば、死亡保険金は受け取れます。
これには、「えっ、そうなの?」と意外に思う人も多いのですが、相続を勉強した人であれば、これはご存じですよね?
そして、放棄した人が死亡保険金を受け取る場合でも、契約者貸付金がある場合には、やはりその金額は差し引かれて、死亡保険金が支払われます。
保険会社からすれば、貸したお金を回収するべく当然の行為ですよね。
【相続放棄をした場合、債務控除は使えない】
少しややこしいのは、「相続放棄をした人は、相続税の計算において債務控除(※)は使えない」というルールです。
※被相続人の借入金や未払金などの債務、葬式にかかった費用を、相続財産の価額から差し引くこと。債務控除が使えるのは相続人等であって、相続放棄をした人は使えない。例外として、相続放棄した人が葬式費用を負担した場合には当葬式費用部分は債務控除できる。
さて、ここで鋭い人は以下のように考えるかもしれません。
「ということは、受け取った死亡保険金は、(契約者貸付金100万円が差し引かれた)2,900万円だけど、相続放棄をした人は債務控除が使えないので、相続税の対象となるのは3,000万円なのでは?」
なるほど、もっともな考えですよね。
しかし、相続放棄をした人の場合でも、実際に受け取った2,900万円がみなし相続財産として、相続税の課税対象となるのです。
【相殺された契約者貸付金は、なかったものとなる】
なぜなら、保険金が支払われる場合、もし契約者貸付金があれば、その金額分差し引かれた金額(実際に支払われた金額)が、保険金額として扱われるからです。
すなわち、相殺された契約者貸付金額に相当する保険金額は、なかったものとされるからです。
なので、相殺された契約者貸付金は、そもそも債務控除として認識されないわけですから、(債務控除が使えない)相続放棄をした人であっても、まったく関係ないわけですね。
さて、今回はシンプルな事例ながらも、「契約者貸付金」をテーマに、「死亡保険金」「相続放棄」「債務控除」と、3つの相続用語が絡んで少々難しかったかと思います。
しかしこれは、現実にも十分起こり得るケースなので、何かの参考になれば幸いです。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏