【企業経営】組織ぐるみの不正の背後にあるもの(1)
DATE23.11.07
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
少し前に中古車販売会社の不祥事に関する報道が連日メディアを賑わせました。今回は2回に分けて、組織ぐるみの不正について考えてみたいと思います。
■集団浅慮の前提条件
業績達成のために、日常的に社員に強いプレッシャーがかかっている会社では、偽装行為や部下に対して罵詈雑言ともとれる業務指示が生まれてしまうことがあります。傍から見ると、さも過激な人達が多く、非人間的な行いのように思えますが、これは割とあり得る話です。
そもそも集団の意思決定の特徴として、集団浅慮というものがあります。その集団の凝集性(一致団結の度合い)が高く、そこに何らかのプレッシャーがかかると、意思決定(あるいはその結果としての行動)が極端にブレるという傾向です(グループシフト)。
会社の場合、たとえば採用過程や研修などを通じて成果至上主義という共通価値観が醸成されていく中で、それについていけない従業員は退職し、従業員の同質性や凝集性が高い集団となっていくことが考えられます。また、業績達成の圧力がメンバーに大きなプレッシャーをかけ、集団浅慮の土壌が生み出されていきます。
■過激さが増幅される
その集団のメンバーのリスク許容度が比較的高いと、集団内での討議を通じてそれが増幅され、出される結論はさらにハイリスクなものとなります(リスキーシフト)。リスク許容度が高い集団で、現在の目標が達成されると、集団内での存在意義を失わないために、より過激な目標が設定され、ますますエスカレートしていきます。
リスク許容度が高い組織文化である場合、その中で自身の評価を上げるためには、さらに過激な主張をする必要性が出てきます。それが結果的に不正の自己嫌悪感などを薄めてしまうことにも繋がります。
逆に、その集団のメンバーのリスク許容度が比較的低いと、集団討議を通じてそれが増幅され、出される結論はさらにローリスク(無難な)ものとなります(コーシャスシフト)。
ちなみにテロリストの研究で著名なディツラーは、テロリストはプロセスの中に生きていることを指摘しています。彼は、テロリストにとっては目標達成よりも、その集団と一体化していくプロセスと、それを成員が相互に確認することのほうが大切であると述べています。通常の会社組織でも同様であり、合理的な判断よりも、組織内での地位確保が優先され、過激さが増幅しやすいのです。
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元