【相続】後になって、遺言書が見つかったら?
DATE23.10.23
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
遺産分割協議が終わって一安心と思っていたら、後になって遺言書が見つかった・・・決して珍しいケースではありません。
そんなとき、せっかく済んだ遺産分割協議は、どうなってしまうのでしょうか?
【基本的にはやり直しだが・・・】
結論から言えば、遺産分割協議が終わった後に遺言書が見つかった場合、基本的には遺産分割はやり直しとなります。
なぜなら、遺産分割協議の内容よりも遺言書の内容が優先されるからです。
しかし、相続人の全員が「遺産分割協議の内容(分け前)のままでいいよ」と納得したのであれば、やり直しは必要なく、遺産分割協議通りに遺産を分けることが可能なのです。
もちろん、誰か1人でも「嫌だ、やり直そう」と言えば、遺産分割はやり直さなければいけませんが。
ちなみに、後から見つかった遺言書に「友人Aに100万円を譲る」などと、相続人以外の人に遺贈(※)があった場合も、友人Aさんが納得のうえ遺贈を放棄するのであれば、(そして相続人全員が合意すれば)やり直しは必要なく、遺産分割協議通りに分けることができます。
※遺言によって財産を無償で譲ること
もちろんこの場合も、友人Aさんが「放棄などしない、100万円はもらう」と言えば、遺産分割はやり直す必要があります。
なお、後から見つかった遺言書に遺言執行者が選任されている場合は、相続人全員が「やり直さなくてもいいよ」と合意しても、遺言執行者が「やり直しが必要」と言えば、やり直す必要があります。
【相続人の変動に要注意】
注意したいのは、後から見つかった遺言書によって、相続人に変動が生じるような場合です。
なぜなら遺産分割協議は、必ず「相続人全員」で行う必要があるからで、協議に参加しない相続人がいたり、相続人以外の人が参加していたりした場合は無効となってしまうからです。
そのような場合には、相続人の意思に関係なく遺産分割協議はやり直さないといけないのです。
具体的には「廃除」「欠格」「認知」が絡んでくるような遺言書は、要注意です。
・廃除
廃除とは、被相続人に対しての虐待等を加えていたり、著しい非行があったりする相続人の相続権を失わせることで、廃除は遺言によっても可能です。
たとえば、後から見つかった遺言書に、長男を廃除する旨が記載されていた場合(そして、その廃除が家庭裁判所に認められた場合)、相続権を失った(相続人ではない)長男を交えて行われた遺産分割協議は無効となり、もう一度やり直しとなります。
・欠格
欠格とは、欠格事由(被相続人等の殺害や、遺言に関する違法な干渉)に該当した場合、相続権を失うことです。
たとえば、後から見つかった遺言書が、もし長男によって隠匿されたものであれば、「遺言書の隠匿」は欠格事由に該当するので、長男は当然に相続権を失います。
その場合、相続権を失った(相続人ではない)長男を交えて行われた遺産分割協議は無効となり、もう一度やり直しとなります。
なお、遺言によって廃除や欠格となった相続人に子がいれば、その子が代襲相続人として相続権を引き継ぐことになるので、その場合やり直しとなる遺産分割協議においては、その代襲相続人も参加させなければいけません。
・認知
認知は、遺言によっても可能です。
もし、後から見つかった遺言書に「愛人の子を認知する」とあれば、新たな相続人が発生することになります。
となると、その「愛人の子」が参加せずに行われた遺産分割協議は無効となり、その遺産分割協議はやり直し・・・となりそうなものですが、実はこの場合、認知を受けた相続人から請求があったときに、すでに遺産分割を行っていた場合には、その相続分に相当する金銭の支払いをすれば、遺産分割協議のやり直しは必要ないのです。
ちょっとややこしいですね。
【後々の面倒を避けるためには】
すなわち、遺産分割協議が終わった後から遺言書が見つかった場合、遺産分割協議のやり直しが必要か否かは、ケースバイケースなわけです。
もっとも、やり直しが必要なくても、いろいろと面倒なことは間違いありません。
遺言書の効力には時効はないので、遺産分割終了後、かなり時間が経ってから遺言書が見つかると、とても面倒なことになるでしょう。
そんな面倒を避けるためにも、遺言書の保管場所はあらかじめしっかりと決めておくことが必要です。もしくは、公正証書遺言(公証役場に保管)にするか、自筆証書遺言書保管制度(法務局に保管)を使って、「後から遺言書見つかった」というようなことはないようにしたいものですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏