ごえんをつなぐコラム

【企業経営】給料を上げるとモチベーションが低下する?(1)

DATE23.09.04

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

一般的に、金銭的報酬を上げるとモチベーションが高まると言われています。しかしながら、金銭的報酬を上げても、モチベーションが上がるとは限らず、かえって内発的動機づけ(自分の内面から沸き起こった興味・関心や意欲による動機づけ)を損なうことが多くの研究で明らかになっています。

 

■モチベーションに影響を与える要因

まず、モチベーションに影響を与える要因には、次の2つがあることを理解する必要があります。

○外発的動機づけ
外的報酬によりモチベーションを高める。
給料・賞与、昇進、賞賛・表彰など。

○内発的動機づけ
内的報酬によりモチベーションを高める。
熟達感、成長感、充実感、達成感、責任感、使命感、好奇心など。

外から報酬が与えられないとモチベーションが上がらないというのではなく、自分の内側からの要因(報酬)でモチベーションが上がることが理想です。

 

■心理学者のエドワード・デシの実験

内発的動機づけ理論を唱えた心理学者のエドワード・デシは、次のような実験を行いました。

<実験内容と結果>
SOMA※と呼ばれる面白いパズルを多く用意して、パズル好きな大学生を集めてA・Bの2つのグループに分け、自由に解かせるという3日間の実験を行った。

※7つの様々な形の立体のピースを3マス×3マス×3マスの立方体に組むパズル

Aグループ
1日目:自由に解かせる。
2日目:パズルを1問解くごとに金銭報酬を与える。
3日目:また自由に解かせる。

Bグループ
1日目から3日目まで自由に解かせる(パズルを解いても金銭報酬は一切なし)。
3日目の結果を見たところ、Aグループのほうが著しいモチベーションの低下が見られた。Aグループでは、それまでは休憩時間中も熱心にパズルを解いていたのに、そのようなことはまったく見られなくなった(Bグループについてはそのような変化は見られなかった)。

 

■外的報酬は「やらされ感」につながる

なぜ、Aグループの学生たちは、パズルを解くモチベーションが低下してしまったのでしょうか?

それは、金銭報酬という外的報酬が与えられた結果、内的報酬が機能しなくなったからです。つまり、「興味があってやる」という心理状態から、「お金のためにやらされている」という心理状態にシフトしてしまい、お金がもらえないとやる気をなくしてしまったのです。
次回のコラムでは、こうした心理状態のシフトが起こる原因や望ましい報酬の与え方について考えていきたいと思います。

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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