【年金】国民年金第3号被保険者が海外転出したら?
DATE23.08.18
新型コロナウイルスの影響による行動制限がなくなり、最近では海外に生活拠点を移す方も増えてきているようです。
外務省が公表している「海外在留邦人数調査統計」※によると、令和4年の海外在留邦人数は約130万人とされています(在留期間3カ月未満の短期滞在者は除外)。
令和元年度の海外在留邦人数は約140万人だったため、新型コロナウイルスの影響でやや減少している状況ですが、そのうち永住者(生活拠点を海外に移した方)が約55万7千人と過去最も多い人数です。
※外務省,「海外在留邦人数調査統計」, https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100436737.pdf
さて、国民年金第3号被保険者の方は、海外に転出する際、手続きが必要なのをご存知ですか?
今回は、国民年金第3号被保険者の方が海外転出する際の手続きについてみていきます。
健康保険で配偶者の扶養に入っている方(被扶養者)で20歳以上60歳未満の方は、国民年金第3号被保険者となります。夫の扶養に入っている妻、妻の扶養に入っている夫ということになります。
健康保険の被扶養者となるためには、次の3つの要件を満たす必要があります。
①日本国内に住所(住民票)があること
②被保険者により主として生計を維持されていること
③年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)
かつ
同居の場合は収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
別居の場合は収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であること
①は、令和2年4月から改正で新たに加わった要件で、被扶養者は原則として、日本国内に居住していることが要件とされました。海外に転出してしまうと、被扶養者の要件を満たせなくなくなってしまいます。
ただし、留学、海外赴任に同行する場合等は、日本国内に生活の基礎があると認められ、国内居住要件の例外(海外特例要件)に該当し、海外に住んでいる期間も被扶養者として認定されることが可能です。
こうした制度改正により、令和2年4月以降、海外在住期間中について健康保険の被扶養者資格と国民年金の第3号被保険者資格を継続するためには、別途「海外特例」に該当する旨の届出を行わなければなりません。
なお、海外在住期間、資格を継続しない場合は、資格喪失の手続きを取らなければなりません。
海外特例の届出は、被保険者の会社から行います。
会社から、協会けんぽの会社は日本年金機構へ届出、健康保険組合の場合は、健康保険組合と日本年金機構それぞれに届出を行います。
以前は手続きの必要がなかったところですから、扶養家族がいる方が海外赴任する際には手続きモレが起きないよう注意が必要です。
なお、海外特例に該当するかどうかの確認書類として、以下の添付書類が必要となります。
【必要な添付書類】
①外国において留学をする学生の場合
⇒査証(ビザ)、学生証、在学証明書、入学証明書等の写し
②外国に赴任する被保険者に同行する家族の場合
⇒査証(ビザ)、海外赴任辞令、海外の公的機関が発行する居住証明書の写し
③観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者の場合
⇒査証(ビザ)、ボランティア派遣機関の証明、ボランティアの参加同意書等の写し
④被保険者が外国赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって、②と同等と認められる者の場合
⇒出生や婚姻等を証明する書類等の写し
⑤①から④までに掲げる者のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者の場合
⇒個別に判断
確認書類が外国語で作成されている場合は、翻訳文を用意して添付しなければなりません(翻訳者の署名も必要)。
また、海外特例に該当している方が海外特例に該当しなくなった場合は、海外特例「非該当」の届出を行わなければなりません(この届出も被保険者が所属する会社から行います)。海外特例に該当しなくなった場合とは、日本に帰国した場合、海外特例に該当しない渡航(労働目的、渡航先で永住)になった場合などがあります。
海外特例は令和2年4月以降の海外在住期間に適用されます。海外特例の届出は、扶養主(被保険者)の会社経由できちんと行っておかないと、のちのち資格が変わるときに手続きが滞ってしまうこともあります。
なお、健康保険、厚生年金に加入している被保険者本人は、会社に在籍している限り、住所が海外でも被保険者資格を続けることができますので、とくに手続きをする必要ありません。ただし条件によっては介護保険や赴任先の社会保障制度に関する手続きなどが必要になる場合もあります
海外転出の際は、年金の手続き等の社会保障制度もきちんと確認しておきましょう。
社会保険労務士
後藤 朱