【企業経営】日本の生産性は本当に低いのか?
DATE23.08.03
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
前回に続き、生産性について考えてみたいと思います。
■日本の生産性は低いのか?
日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2022」によれば、日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は49.9ドル(5006円/購買力平価換算)で、OECD加盟38カ国中27位であるとのことです。
多くの方は、「昔の日本は生産性が高かったが、国際競争力が段々落ちていった」と思われるでしょう。では、実際に日本生産性本部の過去の日本の順位を確認してみましょう。
1980年:20位
1990年:20位
2000年:21位
2010年:20位
2021年:27位
現在よりいくらか順位が高かったとはいえ、エレクトロニクス製品や自動車がアメリカ市場を席巻していたバブル絶頂期ですら20位程度で、日本生産性本部の調査では、別に高いわけではなかったのです。
■生産性の国際比較には意味があるのか?
生産性の国際比較というと、多くの人は「同じ作業を各国の人がやった場合のスピードの差」と思いがちですが、そのような作業テストが実際に行われているわけではありません。単に付加価値額(≒名目GDP)を時間で割っているにすぎません。そして名目GDPの値は各国の通貨が違うので、純粋に比較することができません。
そこで日本生産性本部では、国際比較を行うために、相対的購買力平価から導き出される理論値で各国通貨をドルに換算しています。購買力平価(説)とは、同じ商品であればどの国で買おうが同じ支払額になるように決まる為替レートのことです。説明すると長くなるので省きますが、購買力平価は各国(日米)の物価変動で変わり、かつ両国でまったく同じものを生産していることを前提としており、理論値というより便宜的なものにすぎまぜん。
現に、岩田規久男元日銀副総裁をはじめ、多くのエコノミストが「労働生産性の国際比較」をほとんど意味がないものと捉えています。※
※岩田 規久男,「日本型格差社会」からの脱却, 光文社
少なくとも「日本人は同じことでもトロトロやっている」といった印象は誤りです。日本の生産性については課題があるのは認めますが、極端な悲観論にはとらわれるべきではないでしょう。
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元