ごえんをつなぐコラム

【相続】未支給年金は、相続財産ではない!

DATE23.06.21

こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

未支給年金とは、年金受給者が死亡したときにその死亡した時点で、まだ支給されていない年金のことで、相続においては多くのケースで発生します。

今回は、そんな未支給年金がテーマです。

 

【公的年金は、後払い】

国民年金や厚生年金などの公的年金を受け取っていた人が、6月20日に死亡したとします。

公的年金は、死亡した月の分まで支給対象となるので(日割りではなく1ヵ月分)、この場合、6月分の年金は受け取ることができます。

 

ただし、公的年金は後払いです。

偶数月の15日に、その前月・前々月の年金が支払われるので、6月分の年金は、8月15日に支払われることになります。

つまり公的年金受給者が死亡した場合、年金の受給権は発生しているものの、まだ受け取っていない年金、いわゆる未支給年金が発生するわけです。

 

【未支給年金は、受取人の固有財産】

そしてこの未支給年金は、死亡した人の同一生計遺族が請求して受け取ることになります。

 

その際、未支給年金は相続財産とはなりません(すでにタイトルでネタバレしていますが)。

なので、未支給年金は遺産分割の対象とはならず、また相続放棄をしても受け取ることができるのです。未支給年金は、受取人の固有財産となるのです。

未支給年金の請求時には、受取人となる遺族が自己の固有の権利として、自己の名で請求することになります。

 

なお、年金受給者死亡届の提出が遅れて、死亡した人の口座に年金が振り込まれてしまうこともあります。

しかしそれは「うっかり振り込まれてしまった未支給年金」ということで、やはり相続財産とはなりません。

 

【なぜ、相続財産ではないのか?】

未支給年金とは、もともとは死亡した人が受け取るはずだったものです。

すなわち本来であれば、死亡した人の財産となっていたものですから、一般的な感覚からすればそれは相続財産とされそうなものですよね。

 

しかし国(国税庁)の見解としては、「公的年金は、その受給者が死亡した際には、受給者の遺族の生活保障のために支給されるものとされているので、未支給年金は相続財産とはされずに、受給する遺族の固有財産とされているのです。
※国税庁ホームページ.「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」

このような理由から、公的年金の未支給年金は相続財産とはならないのです。

ただし私的年金(企業年金等)の未支給年金は、その種類や契約内容によっては、相続財産となる場合もあるので気を付けましょう(詳細は割愛)。

 

【非課税というわけではない】

公的年金の未支給年金は相続財産ではないので、相続税はかかりません。

しかしそれは非課税というわけではなく、あくまでも相続税の課税対象とはならないだけであって、税金はかかります。

 

遺族が受け取った未支給年金は、一時所得として受け取った人の所得税の対象となります。

とはいえ一時所得については、年間で最高50万円の特別控除があるので、実際には税金を支払う可能性は低いかと思います(未支給年金が50万円を超えるケースは少ないと思われる)。

ただし、生命保険の満期金など、他に一時所得に該当する所得がある場合には、それらを合算することになり、所得税がかかるケースもあるので要注意です。

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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