【年金】令和5年度の年金額の改定について
DATE23.02.15
先日、厚生労働省から令和5年度の年金額と、令和5年度、令和6年度の国民年金保険料などの発表がありました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000191631_00017.html
今回はこの内容をみていきたいと思います。
・令和5年度の年金額は?
国民年金の年金額は、賃金や物価の変動に応じて毎年度改定を行う仕組みとなっていて、法律上の年金額(780,900円)に改定率を掛けて計算されます。この改定率は、前年度の改定率に、名目手取り賃金変動率または物価変動率と、マクロ経済スライド調整率を掛けて計算します。
改定率=前年度改定率×名目手取り賃金変動率 (または物価変動率)×マクロ経済スライド調整率
67歳以下の方(新規裁定者)の年金額は名目手取り賃金変動率を用い、68歳以上の方(既裁定者)の年金額は物価変動率を用いて改定されるのが原則です。ただし、既裁定者については、その年度ごとの名目手取り賃金変動率と物価変動率とのバランスによって、新規裁定者と同じく名目手取り賃金変動率を用いることがあります。
令和5年度の年金額改定に用いる物価変動率は2.5%、名目手取り賃金変動率は2.8%となり、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回りました。
そのため、令和5年度の年金額は、新規裁定者は名目手取り賃金変動率を、既裁定者は物価変動率を用いて改定されることになりました(下図参照)。
出典:厚生労働省ホームページ「令和5年度の年金額改定について」
さらに、令和5年度のマクロ経済スライド※1による調整(▲0.3%)、令和3年度・令和4年度のマクロ経済スライドの未調整分(キャリーオーバー分)※2による調整(▲0.3%)が行われ、結果として年金額の改定率は、新規裁定者は2.2%引き上げ(名目手取り賃金変動率2.8%-0.6%)、既裁定者は1.9%引き上げ(物価変動率2.5%-0.6%)という形で改定されることになります。
※1公的年金被保険者数の変動と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの
※2マクロ経済スライドによって前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持した上で、調整しきれずに翌年度以降に繰り越された未調整分
令和5年度の改定率と老齢基礎年金(満額)の年金額についてまとめると、次のようになります。
年金額が変わる67歳以下、68歳以上についてですが、68歳の誕生日から年金額が変わるわけではありません。67歳到達年度までは新規裁定者、68歳到達年度から既裁定者の年金額の対象になります。
令和5年度中に68歳に到達する方は、令和5年4月分の年金額から既裁定者の年金額で計算されることになります。
なお、障害基礎年金や遺族基礎年金の子の加算額で用いる改定率は、新規裁定者の改定率で計算します。
2人目までの加算額は228,700円、3人目以降の加算額は76,200円となります。
年金額だけをみると、前年よりも増額になりますが、新規裁定者と既裁定者で年金額が異なる金額になるのははじめてのことです。年金額の説明を行う際は、気をつける必要がありますね。
・国民年金の保険料は?
令和4年度の国民年金保険料は16,590円でしたが、令和5年度は16,520円、令和6年度は16,980円となりました。2年前納の制度があるため、国民年金保険料は、翌年度分も発表になっています。
・在職老齢年金はどうなる?
厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金のことを在職老齢年金といいますが、基本月額と総報酬月額相当額の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。この一定額を支給停止基準額といいます。
令和5年度の在職老齢年金の支給停止基準額は、48万円となりました。令和4年度の47万円から変更となりました。こちらも、4月分の年金から変更になります。
(参考文献)
*1厚生労働省「令和5年度の年金額改定について」.厚生労働省ホームページ.2023.
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000191631_00017.html(参照 2023-2-13)
社会保険労務士
後藤 朱