【相続】相続放棄の大きな誤解
DATE23.01.23
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回は、相続関連のセミナー・講義において、参加者の方に「ええ、そうなの?」「それは、知らなかった(誤解していた)」と、よく驚かれることを書いてみようと思います。
【相続放棄と死亡保険金の違和感】
参加者の方がよく驚かれること、それは「相続放棄していても、死亡保険金は受け取れる」ということです。
たとえ相続放棄をしていても、その人が、死亡保険金受取人として指定されていれば、死亡保険金は受け取ることができるのです。
相続を放棄しているのに、お金(保険金)を受け取れる・・・感覚としては、何となく、しっくりこないかもしれません。実際、そんな違和感からか、「相続放棄している人は、死亡保険金は受け取れない」と思い込んでいる人は、実に多いのです。
少なくとも私は、相続関連のセミナー・講義の現場にて、そのことを実感しております。
「この問題、Aさんは相続放棄をしているのに、死亡保険金を受け取っているのはおかしくないですか?」との質問を受けたのは、一度や二度ではございません。
【死亡保険金は相続財産ではない】
相続を放棄すれば、亡くなった人の財産は、一切相続しません(できません)。
それなのに、なぜ、相続放棄していても死亡保険金を受け取れるのか・・・それは、死亡保険金受取人が指定されている場合、その死亡保険金は相続財産ではなく、「受取人の固有財産」だからです。
相続放棄が影響するのは、あくまでも「相続財産」であって、「受取人の固有財産」である死亡保険金には影響はないのです。
いかがでしょうか?
この死亡保険金の性質(相続財産ではなく「受取人の固有財産」であること)を理解すれば、「相続放棄していても、死亡保険金は受け取れる」ことに対する違和感は、解消されるのではないでしょうか?
ちなみに、死亡保険金を受け取った後でも、相続放棄をすることは可能です。
また、(相続財産ではなく、受取人の固有財産である)死亡保険金は、他の相続財産とは区別され、遺産分割の対象とはなりません(※)。
※但し、遺産総額に占める死亡保険金の割合が、極端に大きい場合を除く。
【相続税計算の「非課税枠」は使えない】
ところで、死亡保険金は相続財産ではないと書きましたが、相続税の計算においては、死亡保険金は「みなし相続財産*1」として、相続税の課税対象となります(契約者・被保険者が被相続人、受取人が被相続人以外の場合)。
とはいえ、相続人が受け取った死亡保険金には、「一定の非課税枠(500万円×法定相続人の数)」が認められるので、相当な金額が、課税対象から除かれます。
しかし、相続人以外の人が受け取った死亡保険金には、この非課税枠が使えません。
そして、相続放棄した人は相続人ではないわけですから、当然、相続放棄した人が受け取った死亡保険金にも、この非課税枠は使えないことには注意が必要です。
*1被相続人から相続または遺贈により取得したものではないが、実質的に本来の相続財産と同様の経済的効果を持つもの。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏
(参考文献)
・相続検定2級 基本テキスト.TAC株式会社.2022年