ごえんをつなぐコラム

【年金】繰下げ待機中に、過去にさかのぼってもらう選択をする場合

DATE23.01.12

あけましておめでとうございます。

令和5年1回目の記事です。今年もみなさんに役に立つ年金のトピックスを提供していきたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

さて、新年1回目は、老齢年金の繰下げ制度に関連して令和5年4月から実施される改正点を紹介していきたいと思います。

 

老齢基礎年金や老齢厚生年金を繰下げする場合、繰下げ待機期間*1というものが出てきます。令和4年4月より、老齢年金の繰下げの上限年齢が75歳まで延長されました。

繰下げ待機期間中は、いつでも受給権発生時点(65歳時点)にさかのぼってもらうという選択もできます。

この場合、さかのぼって受け取ることができる年金は、5年分です。

*1 65歳から支給繰下げ請求をするまでの年金を受け取っていない期間

 

年金を受け取る権利は、権利が発生してから5年を経過したときは、原則時効によって消滅しますが、所定の手続きをすることで時効消滅を免れることができます。一方、支払期月ごとに年金給付の支給を受けられる権利については、各支払期月の翌月の初日から5年を経過したときは、時効により消滅します。

これにより、年金の権利はあるものの、その権利が発生してから5年以上手続きをしなかったという場合、過去にさかのぼって受け取れる年金は5年分となります。5年よりも前の期間分の年金は、原則として、支払われないことになります。

 

65歳以降の老齢年金について繰下げを検討する方は、いったん65歳以降の年金を繰下げ待機し、実際に請求手続きをする時点で繰下げにより増額された年金を請求月の翌月分から受け取るか、増額なしで65歳に戻って受け取るかを選択することができます。

繰下げ待機をしていたものの、やはり65歳から受け取りを選択する場合、その選択が70歳になるまでの間であれば、時効により消滅する期間はありませんが、法改正で繰下げの上限年齢が75歳になったことにより、70歳を過ぎてから過去にさかのぼって65歳から受け取りを選択すると、5年よりも前の期間の年金については、時効により消滅して受け取れない期間が出てきてしまうのです。

 

そこで、今回特例として、令和5年4月1日以降に年金の請求を行う方で、年金を受け取る権利が発生してから5年経過後に、繰下げ受給の請求を行わず、老齢基礎年金や老齢厚生年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合には、請求の5年前に繰下げの請求があったものとみなして、増額された年金を5年分一括で受け取ることができるようになりました。

この特例は、昭和27年4月2日以降に生まれた方、または平成29年4月1日以降に受給権が発生した方が対象となります。

出典:日本年金機構ホームページ「老齢年金ガイド(令和4年度版)」P.12より

 

たとえば、繰下げ待機中の方が、71歳0か月で繰下げの申出をしないで、過去にさかのぼって年金を受け取ることを選択した場合、66歳時点の増額率(0.7%×12月=8.4%)で計算された老齢年金を過去5年分一括で受給し、今後も8.4%増額された老齢年金を受け取ることができます。

 

なお、繰り返しになりますが、令和5年4月1日以降に請求する年金からスタートする制度です。年金の実務に携わる方は、概要をきちんと理解しておきましょう。

社会保険労務士
後藤 朱

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