【企業経営】日本企業は特許の出願数を増やすべきか?
DATE22.11.04
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
これまで「できるだけ多くの自社独自の技術を開発しそれらを特許化して守るべきだ」といわれてきました。しかしこうした主張は古いものになりつつあります。今回は、経営戦略における知的財産戦略について取り上げます。
■世界の特許数の状況
世界知的所有権機関(WIPO)によると、2021年の国際特許出願件数の国別ランキングは、1位:中国(69,540件)、2位:米国(約59,570件)、3位:日本(50,260件)、4位:韓国(20,678件)、5位:ドイツ(約17,322件)となっています。*1
日本は2016年にはアメリカに次いで世界第2位でしたが、2017年に中国に抜かれました。中国は2000年代に入ってから、2桁の伸びを続けており、2019年にアメリカを抜きました。こうした状況から「日本企業も研究開発を強化して特許数を増やすべきだ」という主張があります。
■2000年代に日本企業は特許数を増やしたが…
日本の製造業の低迷が叫ばれてから久しいです。では、日本の製造業衰退の要因は、特許戦略の立ち遅れによるものなのでしょうか。
2003年の政府による知的財産戦略推進計画により特許の数を効率的に増やす政策に舵をきったことで、2000年には1万件程度にしか過ぎなかった国際特許の出願件数は急伸し、2012年には4万件を突破しました。
アメリカの調査会社、クラリベイト・アナリティクスは、毎年、特許数、特許登録率、特許のグルーバル性、特許の影響力の4つの観点から、Top100グローバル・イノベーターを発表しています。2022年は日本企業が35社を占め国別1位となっています。
次に企業別の特許の国際出願件数を見てみます。2021年の出願件数のランキングは次のとおりです。(出展:WIPO)*2
1 ファーウェイ(中国)6,952
2 クアルコム(米国)3,931
3 サムスン電子(韓国)3,041
4 LGエレクトロニクス(韓国)2,885
5 三菱電機(日本)2,673
6 OPPO(中国)2,208
7 BOE(中国)1,980
8 エリクソン(スウェーデン)1,877
9 ソニー(日本)1,789
10 パナソニック(日本)1,741
日本企業は50位以内に15社がランクインしています。中国企業に押されているとはいえ、依然として日本企業は特許出願数(特許数)は多いです。一方、GAFAMはというと、マイクロソフト17位、グーグル25位、アップル36位で、突出して多いわけではありません。日本企業とGAFAMでどちらが収益が高いかは明らかでしょう。つまり、特許数を多くしても、必ずしも業績に結びつくわけではないと言えます。
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元
参考文献
*1世界知的所有権機関,“WIPOにおける国際IP出願件数が過去最高レベルに到達”,
World Intellectual Property Organization,2022.
https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2022/article_0002.html(参照 2022-11-02)
*2世界知的所有件機関,“2022年PCT年次報告 エグゼクティブサマリー”,World Intellectual Property Organization,2022.
https://www.wipo.int/edocs/pubdocs/ja/wipo-pub-901-2022-exec-summary-ja-executive-summary-pct-yearly-review-2022.pdf(参照 2022-11-02)