【相続】そして、誰もいなくなった ~相続人全員が、放棄をしたらどうなるの?~
DATE22.10.21
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回のテーマは、「相続人全員が放棄をした場合」についてです。
【相続放棄で、相続権は移っていく】
相続放棄をすれば、初めから相続人ではなかったとみなされ、亡くなった人の財産は一切相続することはありません。
ただ、相続放棄をすることで、その相続権は、次の順位の相続人に移ることになります。
たとえば、もともとの相続人が「長男」のみの場合、長男(第1順位)が相続放棄をすることで、その相続権は親(第2順位)に移ります。そして、その親も相続放棄をした場合には、相続権は兄弟姉妹(第3順位)へと移っていくのです。
なお、相続放棄をしても、次の相続人が財産管理を始めるまでは、財産管理を継続しなければいけません。
相続放棄の手続きをしたら終わり、ではないのです。
【相続人全員が、放棄をしたら?】
相続放棄をするということは、「資産よりも借金の方が多い」「面倒な不動産があって管理が大変」といったケースが多いと考えられます。
その場合は、おそらく相続放棄は連鎖していく可能性が高いです。
前の例であれば、長男が放棄、親も放棄、そして兄弟姉妹も放棄するといった感じで、このように、相続人全員が放棄をした場合、相続財産はどうなってしまうのでしょうか?
結論から言えば、相続財産は最終的には、国が引き継ぐことになります。
ただ、いきなり国が引き継ぐのではなく、まずは相続財産管理人が選任され、「債務の整理」「特別縁故者への財産分与」といった手続きを経て、国のものになるわけです。
【放棄をしても、安心できない?】
相続人全員が相続放棄をすることで、相続人一同財産管理の義務から解放され、「やれやれ」と思うかもしれません。
しかし、相続放棄をしたからといって、即、財産管理から逃れられるわけではありません。
なぜなら、上にも書きましたが、「相続放棄をしても、次の相続人が財産管理を始めるまでは、財産管理を継続しなければいけない」からです。
そして、相続人全員が放棄した場合には、相続財産管理人が選任されるまでは、財産管理からは逃れられないのです。
【相続財産管理人を選任するには?】
ここでポイントとなるのが、相続財産管理人は、相続人全員が放棄したからといって、自動的に選任されるわけではないことです。
相続財産管理人の選任には、利害関係者(債権者や特別縁故者など)からの申し立てが必要なのです。
ただ、相続財産管理人の選任申し立てには、相続財産の管理費用(管理人の報酬含む)が必要となり、その費用が相続財産から払えなければ、申立人は、数十万円程度の予納金*を納めなければなりません。
※予納金:予め裁判所に申立人が支払う相続財産管理人の報酬に充てる費用のこと
なので、相続財産の内容によっては、誰も相続財産管理人の選任申し立てをすることはないでしょう。
そして、誰も申し立てなければ、いつまでたっても、(相続放棄をしたからといって)相続財産の管理義務からは逃れられないということですね。
相続放棄をすれば、即、すべてから解放・・・とのイメージを持っている人も多いと思いますが、必ずしもそうとは限らないのです。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏