【年金】令和4年10月から実施、社会保険の適用拡大による年金受給者への影響は?
DATE22.08.10
前回の記事(https://www.kigyou-keiei.jp/column/2022/07/12_264266.html)で、令和4年10月1日から実施される、社会保険の適用拡大に関する改正について紹介しました。
この改正により、現在年金を受給している方が新たに社会保険に加入することになった場合、年金の受給に影響が出る場合があります。
今後、社会保険に加入する人が安心して加入できるよう、現在年金を受給している人が社会保険に加入する際に、チェックしておきたいポイントを紹介していきます。
ポイント1 厚生年金保険に加入することによって、在職老齢年金の対象になる
老齢厚生年金を受給しながら働いている方には、在職老齢年金という制度があります。
これは、年金の基本月額(加給年金や繰下げ加算額、経過的加算額を除いた老齢厚生年金の額)と総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額+その月を含む前1年間の標準賞与額÷12)が47万円を超えると、その超えた部分について、年金額の全部または一部が支給停止になるものです。
今後もし社会保険に加入することになる場合、老齢厚生年金を受給している人については、年金の基本月額と総報酬月額相当額が47万円を超えるかどうかをチェックしておきましょう。
ポイント2 特別支給の老齢厚生年金に定額部分が加算されている方は経過措置あり
65歳になるまで受給できる「特別支給の老齢厚生年金」は、生年月日や性別、加入していた制度によって支給開始年齢が異なります。
今年度(令和4年度)は、昭和35年度生まれの女性(第1号厚年被保険者に限る)が、62歳の誕生日の前日以降に報酬比例部分の支給開始年齢を迎えています。
特別支給の老齢厚生年金には、長期加入者の特例、障害者特例というものがあります。
これは、
①厚生年金保険の被保険者ではないこと
②長期加入者特例の場合は44年以上の厚生年金保険の加入期間があること、障害者特例の場合は障害等級3級以上の状態に該当すること
のいずれにも該当すれば、報酬比例部分の年金額に定額部分も加算されるというものです。
特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢に該当して、厚生年金の被保険者期間が44年以上ある方や、障害要件に該当している方でも、厚生年金保険に加入している方は、定額部分は加算されません。
今回、社会保険の適用拡大により、新たに厚生年金保険に加入することになり、長期加入者や障害者の特例による加算を受けている方が、改正法の施行前から引き続き働いている場合は、日本年金機構に「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」を提出することで、年金の定額部分を引き続き受給することができるという経過措置があります。
具体的には、次の①および②のすべてに該当する方が経過措置の対象となります。
①令和4年9月30日以前から障害者・長期加入者の特例に該当する老齢厚生年金を受給している方
②令和4年9月30日以前から同じ事業所で引き続き働いており、次のいずれかの理由により、令和4年10月1日に厚生年金保険に加入する方
・特定適用事業所要件の見直し
・短時間労働者の勤務期間要件(1年以上雇用見込あり)の撤廃
・適用事業所の範囲の見直し(士業の適用業種追加)
なお、届出は令和4年10月1日からスタートします。
これらに該当する方は、引き続き定額部分の加算を受けながら厚生年金保険に加入することになります。ポイント1でみた、在職老齢年金による支給停止の対象にはなりますので、年金の基本月額と、総報酬月額相当額が47万円を超えるかどうかのチェックは必須です。
今回の社会保険の適用拡大により、新たに社会保険に適用される方については、110万人程度(※)と見込まれています。実務面でも大きな影響のある改正ですから、事前にきちんと準備をしておくことが大切ですね。
※厚生労働省ホームページ掲載「年金制度の仕組みと考え方」より
社会保険労務士
後藤 朱