ごえんをつなぐコラム

【企業経営】顧客ライフサイクルマネジメントで顧客とともに成長する

DATE22.03.31

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

ビジネスモデルの1つとして、顧客ライフサイクルマネジメントというものがあります。これは、顧客の成長にともなうニーズ、好み、所得の変化に沿って提供価値のラインナップを揃え、将来的に高額の高利益な製品やサービスに誘導するというものです。

 

■顧客を育てて高い商品を買ってもらう

顧客ライフサイクルマネジメントの目的は、最初に低価格のエントリーモデルを買ってもらって自社に取り込み、将来的に高額の高利益な製品やサービスに誘導することにあります。単にいろいろな顧客層を捕まえるために複数の商品・サービスを用意するというのではなく、同じ顧客をランクアップさせるために商品ラインナップを揃えるということです

年齢や所得の上昇に応じた顧客ライフサイクルマネジメントの例としては、次のようなものがあります。

・自動車メーカーでは、「独身・新入社員(コンパクトカー、あるいはエントリーカー)⇒家族持ち・中堅(ファミリーカー)⇒エグゼクティブ(高級車)」というようなランクアップを想定していると考えられます。

・教育事業では対象クラスを、幼稚園児、小学生、中学生、高校生別に設けるなど、ランクアップモデルを設定しています。

・時計メーカーでは、ベーシック・ミドル・ハイ・プレステージの4つのレンジのブランドを持っており、上位のグレードへの誘導を行っています。

また、嗜好やニーズの変化に沿った顧客ライフサイクルマネジメントとしては、カメラ、スポーツ用品、オーディオなど趣味関連の商品が挙げられます。まずはエントリー商品を用意して趣味の世界へ顧客を誘い込み、その世界を深く知り、製品の使用に習熟するに従って上位商品へ誘導するというものです。子供の頃は、安価なミニテニスラケットで親しんでもらい、中級モデル、上級モデルへとグレードアップを図っていくといったパターンです。

 

■顧客ライフサイクルマネジメントのメリット

顧客ライフサイクルマネジメントのメリットには、2つあります。

まず、このビジネスモデルでは、顧客の人生の若い(早い)段階で製品やサービスを通じて顧客を捕捉し、その後、その顧客の成長や成熟に従って新たな製品・サービスへと顧客をシフトさせるため、新規顧客の獲得のためのマーケティング費用を節約することができます。

次に、顧客の年齢が進むにつれて所得が増え、製品・サービスへの理解も進みますので、顧客としてもより高度で高価な商品・サービスを欲しがるようになります。よって、企業側としては、高価な商品・サービスを売ることができるようになり、収益性も増大していきます。

 

■顧客ライフサイクルマネジメントの条件

顧客ライフサイクルの前半では顧客の獲得が優先されるため、場合によっては、利益度外視の価格で販売して顧客のハードルをできるだけ下げる一方で、ライフサイクル後半では顧客が離脱しないように努めながら利益率を上げていきます。そのためにはフルラインナップの品揃えをするとともに、顧客を何らかの慣れや習慣によって囲い込むための仕組みや、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)によって顧客の成長を把握するシステムが必要になります。

つまり「損して得する」という発想です。この発想はかなり広い範囲で応用できますので、結果的により多くの儲けが出るよう、ぜひご自身または支援先のビジネスを見直してみてください。

 

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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