【相続】贈与税の税率は、2種類ある
DATE22.01.21
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは「贈与税の税率」です。
【特例税率と一般税率の違い】
Aさん(30歳)が、2022年中に父親から500万円、叔父さんからも500万円もらったとしましょう。
この場合、父親からの贈与と、叔父さんからの贈与とでは、適用される贈与税の税率は違ってくるのをご存じでしょうか?
まず、父親からの贈与には「特例税率」が適用されます。
直系尊属から、贈与年の1月1日時点で20歳以上(2022年4月1日以降は18歳以上)の者が受けた贈与財産に適用されるのが特例税率です。
そして、叔父さんからの贈与には「一般税率」が適用されます。特例税率に該当しない場合は、一般税率が適用されます。
それぞれの税率は以下の通りです。
〔特例税率〕
基礎控除後
の課税価格 |
200万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円 以下 |
4,500万円 以下 |
4,500万円超 |
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
〔一般税率〕
基礎控除後
の課税価格 |
200万円 以下 |
300万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円以下 | 1,500万円 以下 |
3,000万円 以下 |
3,000万円超 |
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
一見、変わらないようですが、よく見ると、特例税率の方が少し有利(税率の上がり方が、少し緩やか)ですね。
【2つの税率ゆえの、間違い・・・】
さて、ここからが本題です。
では、冒頭の例だと、Aさんにかかってくる2022年の贈与税額はいくらでしょうか?(2022年中には、父親、叔父さん以外からは贈与を受けていないものとする)
よくある間違いが、以下の計算です。
父親からの贈与:(500万円-110万円(基礎控除))×15%-10万円=48.5万円
叔父さんからの贈与:(500万円-110万円(基礎控除))×20%-25万円=53万円
48.5万円+53万円=101.5万円
上記計算では、父親からの贈与(特例税率)と、叔父さんからの贈与(一般税率)を使い分けているので、一見、正しいように見えます。
しかしよく見ると、受贈者1人につき年間110万円の基礎控除を、父親、叔父さんそれぞれの贈与に使っているので(合計220万円使っている)、これはオカシイわけです。
【2つの税率の、正しい使い方】
正しくは、以下の計算手順となります。
① まず、2022年中に受けた、父親からの贈与と、叔父さんからの贈与を合計する
500万円+500万円=1,000万円
② その合計額から、基礎控除(110万円)を差引く
1,000万円-110万円=890万円
③ その基礎控除後の金額(890万円)すべてに特例税率を適用して、贈与税額を算出する
890万円×30%-90万円=177万円
④ その基礎控除額の金額(890万円)すべてに一般税率を適用して、贈与税額を算出する
890万円×40%-125万円=231万円
⑤ ④・⑤それぞれの税額に、贈与財産の合計額のうち、「特例税率財産」「一般税率財産」のそれぞれの割合
を掛けて、合計する
177万円×特例税率財産の割合(500万円/1,000万円)=88.5万円
231万円×一般税率財産の割合(500万円/1,000万円)=115.5万円
88.5万円+115.5万円=204万円
いかがでしたでしょうか? ややこしいですよね。
でも、その理屈をしっかり理解すれば、決して理解不能なものではないですし、特例税率財産と一般税率財産が混在するケースは決して珍しくはないので、ぜひ、知っておきたいものですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏