【年金】60歳以降の任意加入について
DATE22.01.11
私はふだん、年金相談員の仕事をしていますが、最近は、早期退職という形で、長く勤めた会社を定年前に退職する方の年金相談が増えてきているように思います。
退職時の年齢が60歳前であれば国民年金への切り替えの手続きが必要ですが、60歳以降であれば、強制加入被保険者ではありませんので、厚生年金保険の被保険者に該当しない限りは、国民年金に加入する必要はなく、任意加入となります。
このとき、60歳以降、任意加入すべきかどうか……という点のご相談をとても多くいただきます。今回は、60歳前後の年金について見ていきたいと思います。
60歳以降国民年金に任意加入できる要件
任意加入することができるのは、次のすべての要件を満たす方です。
・日本国内に住所がある60歳以上65歳未満の方
・老齢基礎年金の繰上げ受給を受けていない方
・20歳以上60歳未満の期間の保険料の納付月数が480月(40年)未満の方
・厚生年金保険に加入していない方
・日本国籍を有しない方は、在留資格が「特定活動(医療滞在)」「特定活動(観光等を目的とするロングステイ)」で滞在する方ではない方
※なお、65歳以上でも年金の受給資格期間120月(10年)を満たしていない場合は、任意加入することができます。
手続きの時期
任意加入は申出をした月から加入となり、過去にさかのぼって任意加入することはできません。手続きは、市区町村の国民年金の窓口や、最寄りの年金事務所にて行います。
60歳の誕生日の前日から手続きが可能ですので、任意加入を検討している方は、手続きを忘れないようにしましょう。
なお、65歳到達前に保険料を納付した期間が480月(40年)に到達すると、任意加入被保険者の資格は喪失となります。
手続きの留意点
60歳以降任意加入した場合、保険料の納付は、口座振替によることが必須です。
口座振替納付をどうしてもできない正当な事由がある場合は「事由該当申出書」を提出する必要があります。正当な事由とは、預金口座をもっていない、保険料を納付書で一括納付したい場合などです。
任意加入のメリット
さて、ここで任意加入するメリットについて考えていきたいと思います。
まずは、将来受け取る老齢基礎年金の額を増やすことができるという点です。
令和3年度の金額で具体的にみてみましょう。
任意加入を1月すると、年金額が1,627円増額します。12月で19,523円、24月で39,045円増額します。
年金は一生涯もらい続けることができるものですので、任意加入して少しでも年金額を増やしておくことのメリットは大きいでしょう。
また、支払った国民年金の保険料は、所得税の社会保険料控除の対象となる点もメリットとして挙げられるでしょう。
最後に
過去に免除や猶予を受けていた期間がある場合や、未加入の期間がある場合、60歳以降任意加入して少しでも将来の年金額を増やすことができるかもしれません。60歳を過ぎて、厚生年金保険の被保険者ではない場合は、ぜひ一度、国民年金の任意加入を検討してみてください。
なかなか日々の生活の中で、自分の年金記録に意識を向けることは少ないかもしれませんが、今は、ねんきんネットやマイナポータルでも、自分の年金記録を確認することができます(それぞれ事前の登録が必要です)。
ついつい後回しにしがちですが、ぜひ、新しい1年がはじまったこのタイミングで、ご自身の将来の年金について考えてみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士
後藤 朱