【相続】相続税と贈与税、税率は同じ?
DATE21.12.21
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは「相続税と贈与税の税率」です。
【相続税と贈与税の税率は、同じである】
いずれも最低税率10%、最高税率55%となります。
なので、単純に制度上の数字だけを見れば同じだと言えるかもしれません。
ちなみに、相続税と贈与税の税率はいずれも「超過累進税率」が採用されており、課税対象となる金額が上がるにつれて、適用される税率が上がっていくしくみになっています。
【相続税と贈与税の税率は、異なる】
しかし、実際に適用される税率となると、相続税と贈与税とではかなり違ってくる可能性があります。
以下に、それぞれの税率(速算表)を示します。
《相続税の速算表》
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
《贈与税の速算表(特例税率(※)》
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
(※)直系尊属から、贈与年の1月1日現在で20歳以上の子・孫などが贈与により財産を取得した場合
なお、2022年4月1日以後の贈与から、民法の成人年齢改正に伴い、受贈者の年齢要件は18歳以上となる。
たとえば、課税対象となる金額が1,000万円の場合、相続税の税率は10%ですが、贈与税だと30%(※)となります。
(※)超過累進税率の計算(参考)
正確には、1,000万円すべてが30%となるのではなく、600万円を超えた部分が30%となる。
すなわち1,000万円のうち、200万円部分までは10%、200万円を超えて400万円部分までは15%、400万円を超えて600万円部分までは20%となり、それらを合計して計算する。 [計算式] 200万円×10%+(400万円-200万円)×15%+(600万円-400万円)×20% ただ、上記の計算は面倒なので、速算表(課税対象(基礎控除後の課税価格)×税率-控除額)を使う。 [計算式] |
そうです。贈与税の方が厳しいことは、一目瞭然でしょう。
相続税だと1,000万円までは最低税率10%で済みますが、贈与税だと最低税率10%で済むのは200万円までで、200万円を超えると、税率はスルスルと上がっていきますね。また、相続税では6億円を超えて、ようやく最高税率55%となりますが、贈与税だと4,500万円を超えると最高税率55%となってしまいます。
【情報操作(?)に気を付けろ】
今回意識いただきたいことは、情報の出され方によっては、(こちら側に知識がないと)いいように誘導される恐れがあることです。
たとえば、「相続税も贈与税も、さほど変わらない」と思わせた方が都合良い場合には、冒頭での「いずれも最低税率10%、最高税率55%」と、単純に制度上の数字だけを取り上げ、税率は同じであることを強調しているかもしれません。
加えて、「課税対象が100万円なら、いずれも税率は10%です」「10億円を超えた部分は、いずれも55%も税金で持っていかれます」などと、相続税・贈与税いずれもが最低税率や最高税率が適用される金額だけをピックアップして、税率は同じであることを強調してくるかもしれません。
たしかに、ウソは言ってはいませんが、一面的な情報しか言っていないことも事実です。
すなわち、言いたくないであろう情報(金額によっては、適用される税率は大きく異なり、贈与税の方がはるかに厳しいこと)が隠されているのも事実です。さらに言えば、相続税と贈与税を比べるのであれば、基礎控除額など計算体系の違いや、諸々の特例なども考慮すべきですが、それらを言って不利になる場合には、それらについても黙っている可能性も高いでしょう。
今回は相続税・贈与税の税率を題材としましたが、実生活においても、あらゆる場面でこのようなケースは少なくないはずです。ぜひ、気をつけたいものですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏