【企業経営】生産性を上げるために本当に必要なこと
DATE21.12.02
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
今回は正しい生産性向上のあり方について取り上げたいと思います。
■生産性とは何か?
生産とは「何らかのインプットから何らかのアウトプットを生み出すこと」ですから、生産性は次の式で表すことができます。
生産性=アウトプット(成果物)÷インプット(投入資源)
置かれている状況や立場によって、アウトプットやインプットは様々です。アウトプットは、企業レベルであれば一般的には売上や利益があたるでしょう。職場によっては、一定期間内で仕上げた製品、処理した業務量といったものがあたります。会議でいえば、何らかの意思決定ということになるでしょう。
一方、インプットは投入資源ですから、「ヒト、モノ、カネ」が該当します。「ヒト」は「どれくらいの人員を投入したか」、「モノ」は「どれくらい機械や材料を投入したか」、「カネ」は「どれくらいのお金を投入したか」で判断します。さらにこの3つに加え、「時間あるいは手間(どれくらいの時間や手間を投入したか)もインプットの対象となります。
■インプットを下げることに終始していないか?
さて、生産性の式からいえることは、分子の「アウトプットを上げる」か、分母の「インプットを下げる」かすれば、生産性は上がるということです。
例えば、みなさんが営業部門の責任者だとしたら、生産性の向上のために何をするべきでしょうか。優先すべきは、分子のアウトプット(売上や利益)を上げることです。分母のインプットが一定でも、あるいは多少上がっても、分子のアウトプットが大きく上がれば生産性は上がるのです。
巷での生産性の議論の多くは、「いかにインプットを下げるか」に終始しているように感じます。本来、企業にとって大事なことは、アウトプットを上げることであり、インプットを下げることではない(売上や利益を上げることで、コストを下げることではない)ことに留意し、アウトプットを上げることも是非考えていただきたいところです。
■ECRSの原則
もちろん無駄なインプットは下げたいところです。生産現場での改善の原則として、ECRSの原則というものがあるのをご存知でしょうか。ECRSとは、改善の4原則のことで、工程、作業、動作を対象とした分析に対する改善の指針です。
E:Eliminate(排除)…なくせないか
C:Combine(結合)…一緒にできないか
R:Rearrange(交換)…順序の変更はできないか
S:Simplify(簡素化)…簡素化・単純化できないか
改善は、排除、結合、交換、簡素化の順番で検討するのが一般的です。なぜなら、実施した場合の効果が大きい順になっているからです。
著名な経営学者のドラッカーは、「一番のコスト削減はやらないことである」といっています。無駄なことをやめるのが一番インパクトがあります。
次にバラバラでやっていることをまとめてやったほうが効率的です。たとえば「同じ作業を複数のスタッフで行っているのであれば、1人の人がまとめて処理する」「異なる時間帯に同じ作業をやっているのであれば、同じ時間にまとめて処理する」といったことです。
作業の順番を入れ替えることで効率が上がる場合があります。たとえば、工場の機械が調子が悪くなってからメンテナンスするよりも、調子が悪くなる前にメンテナンスしておけば、機械停止によるロスタイムを短くできる場合があります。
最後は複雑にやっている作業をできるだけ単純化します。チェックシートや作業フロー図を用いて作業を明確にすることも単純化につながります。
そもそもECRSの原則は生産改善のためのツールですが、製造業に限らず、普遍的に応用することができます。
■トヨタの「7つのムダ」
改善というと有名なのが、トヨタ自動車です。今では「KAIZEN」として海外でも広く取り上げられています。トヨタ自動車では、以下の7つのムダを極力排除することに力点が置かれています。
1.作り過ぎのムダ
2.手待ちのムダ
3.運搬のムダ
4.加工そのもののムダ
5.在庫のムダ
6.動作のムダ
7.不良をつくるムダ
「7つのムダ」は製造業に限らず飲食業でも当てはまります。また事務作業においては、特に「2、4、7」を意識したいところです。
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元