【相続】配偶者は1億6,000万円まで大丈夫!?
DATE21.11.22
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。今回テーマは、「配偶者の税額軽減」です。
【1億6,000万円までは、税額0円!?】
相続税において、「配偶者は1億6,000万円までは大丈夫」という言葉を耳にしたことはありませんか?
これは、配偶者が遺産を取得した場合、それが1億6,000万円までであれば、配偶者には相続税はかからないということです。
たしかにその通りで、これは相続税における「配偶者の税額軽減」という制度です。
【1億6,000万円を超えても、税額0円のことも・・・】
ただ、この1億6,000万円のインパクトが大きくて、意外と見落とされていることがあります。
それは、この制度は正確には、配偶者の取得した遺産額が「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までであれば、配偶者には相続税はかからないということです。
たとえば、遺産総額が4億円で、相続人は、配偶者と長男の2人だとしましょう。
この場合、配偶者の法定相続分相当額は2億円(4億円×1/2(配偶者の法定相続分))となるので、配偶者の取得した遺産額が2億円までなら、配偶者には相続税はかからないのです。
すなわち、配偶者の取得した遺産額が1億6,000万円を超えても、配偶者に相続税がかからないこともあるのです。
とは言え、実際のところ、配偶者の法定相続分相当額が1億6,000万円を超えるケースは稀でしょう。
ほとんどの場合は、法定相続分相当額までよりも1億6,000万円までのほうが多いでしょうから、世間では「配偶者は1億6,000万円までは大丈夫」と言われているわけです。
でも、正確な知識は持っておきたいものですね。
【1億6,000万円(もしくは配偶者の法定相続分相当額)を超えても、効果アリ】
ところで、配偶者の税額軽減でよくある誤解に、下記のようなものがあります。
それは、配偶者の取得した遺産額が「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分相当額」を超えてしまうと、相続税は普通にかかってくる(まったく軽減されない)、と。
いえ、配偶者の取得した遺産額が「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分相当額」を超えたとしても、配偶者が「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分相当額」を取得したときにかかってくる相続税額分は軽減してもらえます。
具体的に見てみましょう。
仮に遺産総額が4億円で、相続税総額が1億円としましょう(便宜上、税額は簡略化)。
この場合、配偶者が取得した遺産が3億円であれば、配偶者が負担する相続税額は7,500万円(1億円×3億円/4億円)となります(下記[参考知識]参照)。
[参考知識]
相続税額の計算では、いったん相続税総額を算出して(※1)、その総額を、実際の取得割合に応じて、各人が負担する。
たとえば、遺産総額(※2)のうち30%を取得すれば、相続税も総額の30%を負担することになる。
※1 実際の取得割合とは関係なく、仮に、法定相続分通りに遺産を分割したものとして計算する
※2 正確には、各人の課税価格の合計
ちなみに、配偶者の法定相続分は1/2とします。
この場合、配偶者が取得した遺産額(3億円)は、「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分相当額(4億円×1/2=2億円)」を超えていますね。
しかし、配偶者の法定相続分相当額2億円(>1億6,000万円)を取得したときにかかる税額5,000万(1億円×2億円/4億円)は軽減してもらえるので、実際に負担するのは差額2,500万円(7,500万円-5,000万円)で済むのです。
【先のことまで考えて・・・】
配偶者が多めに遺産を取得して、その上で、この配偶者の税額軽減を使うことで、大きな恩恵を受けることができるでしょう。
ただ、闇雲に配偶者が遺産を取り過ぎると、いざ、その配偶者の相続(いわゆる二次相続)となったときに痛い目に遭う可能性もあるので、先々まで見通して、判断したいものですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏