株を相続したら、ややこしい?
DATE21.10.21
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは「株式の財産評価」です。
【上場株式は、ややこしくない】
相続したのが上場株式であれば、ややこしくはありません。
ちなみに上場株式とは、証券会社を通じて、誰でも自由に売買できる株式のことで、一般に「株式」と言えば上場株式のことです。
たとえば2021年10月20日(水)に相続が発生し、上場株式を相続した場合、その評価額は以下の4つの価額のうち、最も低い価額となります。
・10月20日(水)の終値
・10月の毎日の終値の平均額
・9月の毎日の終値の平均額
・8月の毎日の終値の平均額
上場株式は「株価」がハッキリしているので、ややこしくはないのです。
上記のように、評価額選択のルールさえ知っていれば、株価そのものを計算する必要はないので楽なのです。
【上場していない株式は、ややこしい】
ややこしいのは、上場していない株式です。
非上場株式、取引相場のない株式とも呼ばれますが、一般には、上場していない(まったく縁もゆかりもない)株式を保有していることは稀なので、多くの場合は、被相続人が経営していた会社の株式のことです。
すなわち、自社株と言ってもよいでしょう。
なぜややこしいかというと、上場していない株式は「株価」がハッキリしていないからです。
上場株式のように、市場で取引されていないので、売買価格である株価が、明確ではないのです。
なので、上場していない株式(一般には、自社株)を相続した場合は、あらためて、その「株価」を計算する必要があり、その計算がなかなか大変なのです。
【3つの計算方法がある】
上場していない株式(一般には、自社株)の評価額の計算方法は、以下の3つです。
・類似業種比準方式
事業内容が類似する上場株式の株価と比較して評価する方式(比較要素は配当・利益・純資産)。
・純資産価額方式
会社の保有する純資産の相続税評価額をベースに評価する方式。
・配当還元方式
会社からの配当金をベースに評価する方式。
それぞれの計算式は(ややこしくて複雑なので)割愛しますが、「どのようなスタンスで計算するのか」を記したので、大まかなイメージだけでも掴んでもらえればと思います。
【誰が相続するかで、計算方法は異なる】
そして、上記3つの計算方法のうち、どれを使って株価を計算するかは、「誰が、その株式を相続したのか」によって異なるのです。
その判断がまたややこしいのですが、ここではザックリと、以下のようにまとめました。
大株主(経営支配力を持っている立場の人) ⇒類似業種比準方式もしくは純資産価額方式
上記以外の人 ⇒配当還元方式
※正確には「同族株主のいる会社」「同族株主のいない会社」に区分して、その上で、取得者の属性によって決まりますが、非常に複雑なので、ここでは割愛します。
同族株主の意味も含めて、気になる人は、ぜひ、相続検定の学習を!
多くの場合、自社株のほとんどは妻や子どもなど、家族が相続することになるので、自ずと相続人は大株主となります。
すなわち、その計算方法は多くの場合、類似業種比準方式もしくは純資産価額方式となります。
なので、これらを原則的評価方式といいます。
【会社規模によっても、計算方法は異なる】
それでは、類似業種比準方式と純資産価額方式、どちらで計算するのか・・・それは、会社の規模によって異なります。
基本的には、以下の通りです。
・大会社:類似業種比準方式
・中会社:類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式
・小会社:純資産価額方式
会社規模の判定も、独自の判定表があって非常に複雑なので、もちろん割愛します(なんだか割愛ばかりで恐縮です)。
ザックリ言えば、規模が大きい会社は「上場株式と比べることができる」類似業種比準方式で、規模が小さい会社は「個人の財産評価と同じスタンス(保有する純資産に着目)の」純資産価額方式というわけですね。
ちなみに、一般には、類似業種比準方式の方が、純資産価額方式よりも株価は低くなるケースが多いので、会社規模が大きい方が、その株式の評価が低くなるので有利と言われています。ただ、純資産価額方式の方が評価が低くなる場合には、そちらを選択することもできます。
なお、大株主以外が非上場株式を取得する場合は、「経営に参加できない」「上場していないので売却困難」なので、配当金くらいしか魅力がない・・・として、基本的には、配当金をベースに計算する配当還元方式を使うわけです(ちょっと乱暴な説明ですが)。
さて、今回は、「株式の評価(とくに非上場株式)」という、実は相続の中でも、かなりややこしいテーマだったので、少々長文になってしまい、かつ舌足らずな説明も多かったと思いますが、ご容赦くださいませ。
それでも、ザックリとでも、非上場株式(いわゆる自社株)の評価の「大まかな考え方」を掴んでいただけたなら幸いです。
相続検定試験でも、ここを苦手にしている方も多いので・・・。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏