ごえんをつなぐコラム

顧客にとっての価値を考える【顧客価値】

DATE21.10.01

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

自社の商品やサービスの使命は、「顧客に何らかの価値を提供すること」にあります。そこで今回は、「顧客価値を考えるためのヒント」をご紹介します。

 

■顧客価値の基本式

顧客価値には基本式があります。

顧客価値=ベネフィット(顧客にとっての何らかの利益・便益)÷コスト

よって、顧客価値を上げるためには、「分子のベネフィットを上げる」か「分母のコストを下げる」というのが基本的な考え方になります。

分子のベネフィットには、大きく「理性面でのベネフィット」と「感性面でのベネフィット」があります。機能(性能・スペック)的価値が理性面でのベネフィットにあたり、情緒的価値(商品を使ってみて感じる価値)や、自己実現価値(自分のパーソナリティを表現してくれる価値)は、感性面でのベネフィットになります。

たとえばビジネス用のかばんを考えると、「どれくらいの容量があるか」「ポケットはどれくらいあるか」「重量はどれくらいか」といったことは機能的価値、「デザインやスタイリング」が情緒的価値、「エコ志向」「ブランドイメージ」「ラグジュアリー感」が自己実現価値になります。

顧客にとっての価値というと、機能的な価値を考えがちです。しかしながら、機能的価値で差別化することは容易なことではありません。他の価値にも視野を広げて「顧客にとっての価値」を考える必要があります。

 

■顧客にとってのコスト

顧客にとってのコストには、金銭面でのコスト(顧客の支払額)、時間面でのコスト(製品を買いに行く、あるいはサービスを利用できる場所までいくのに要する時間)、肉体面でのコスト(商品やサービスを手にし、据え付けて、利用可能にするまでの身体的疲労)、精神面でのコスト(使い勝手を覚える手間など)があります。

前に触れたように、コストを下げれば顧客にとっての価値は高まります。そこでまず浮かぶのは、金銭面でのコストを下げるということです。しかしこれでは、利益が圧迫されることになります。また、体力で劣る中小企業にとって、低価格販売は現実的でもありません。よって、他の「顧客にとってのコスト」を下げられないか考えてみるとよいでしょう。

具体例)

・インテリア小売業のニトリは、組立が簡単な家具で肉体面でのコストを下げています。

・通販大手のアマゾンは価格が必ずしも安いわけではありませんが顧客の時間面でのコストを下げています。

・高齢者向けのスマホであれば、操作法が楽なものを提供できれば、精神面でのコストの低減に貢献できます。

・多くのメーカーの商品を扱う小売業や卸売業であれば、顧客が選択しやすいように、わかりやすい比較表を示すことも、立派に精神面でのコストの低減につながります。

このように顧客のベネフィットやコストを幅広く捉えることで、顧客価値に貢献することができ、自社の商品やサービスが選ばれることになるのです。

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

一覧に戻る