組織が抱える不条理~パーキンソンの法則
DATE21.09.07
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
今回は組織が抱える根本的な問題を示す経験則であるパーキンソンの法則について取り上げます。パーキンソンはイギリスの社会・政治学者で、役所を研究して、1950年代にこの法則をまとめました。この法則には、一般則、第1法則、第2法則、凡俗法則の4つがあります。
■一般則
「役人の数は、なすべき仕事の量に関係なく、一定の割合で増加する」
この理由には、3つの原理があります。
・役人は常に部下を増やすことを望むが、自分の競争相手を作ることは望まない。
・役人は相互の利益のために仕事を創り出す。
・組織が大きくなると、その組織を運営するための新しい仕事が増える。
自らの権力基盤を強化するために規模を拡大させようとすることは会社組織でもよく見られます。
■第1法則
「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」
たとえば、上司から命じられたあるタスクについて、作業時間を15時間、余裕を5時間と見積もったとし、実際には12時間で終わったとします。しかし早めに終わらせてしまうと上司から次のタスクが振られてしまうので、ブラッシュアップと称して、残った8時間を費やしてしまいます。
■第2法則
「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」
部署の予算(収入)を余らせることはまずなく、臨時の予算が付けば必ず消化します。予算を余らせると、次期の予算が減らされるからです。いわゆる予算消化です。
■凡俗法則
「組織は些細な物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く」
たとえば、11人の国会議員メンバーから成る予算委員会(うち2人は税制の専門家)が次の2つの議題について、審議しているとします。
議案1:税制改革のための企画・調査費の予算審議(1億円)
議案2:福祉委員会での年間茶菓代の予算審議(5万円)
税制改革については専門的な知識が求められ、担当の官僚から技術的な説明があっても11人のうち9人は理解できません。そもそも額が大きいのでイメージがつかないということもあります。残りの2人も専門的な話をしても他の委員はどうせ理解できないのだからと発言を控え、その結果、短時間で予算は裁可されます。
議案2になると、他の委員もイメージが沸いてきます。たとえば「コーヒーは出るのか」「どこの菓子なのか」といった具合です。このように金額が小さい予算項目のほうが、議員のイメージがつきやすく、議論が長時間になるのです。
読者の方々も、ミーティングの場で、「なんでこんなに些細なことを延々と議論しているのだろう」と感じたことはないでしょうか。これは凡俗法則の例だといえます。
■パーキンソンの法則への対処法
第1法則、第2法則については、もともと時間や予算に余裕があることが原因ですから、必要以上に余裕を持たせないようにすることが基本的な対処法になります。
部下に仕事を振る時に「どれくらいかかるか」とたずねると、部下は必ず余裕を持って回答します。その場合に少しタイトな期限を設定し、もしそれで終わらなかったらその時に猶予を与えるのです。たとえば「1週間欲しい」と部下にいわれたら、「4日でできない?それでもし終わらなかったら少し伸ばすようにするから。」と答えるのです。
第2法則についても同様です。たとえば予算総額を前年比10%カットで上限を決めてしまい、それで足らなくなったら都度追加を申請させるのです。
凡俗法則は意思決定メンバーの質の問題です。予算が大きい(重要度が高い)事柄については、異なる観点から専門的な知見を有するメンバーで委員会を立ち上げてあらかじめ討論させ、予算委員会はその結論を承認するという場にします。理解できない人間に討論はできません。些細な事柄に必要以上に重点を置くことへの対処方法としては、議長(あるいはファシリテーター)がきちんと管理することです。
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元