相続税を払っている人の割合は・・・?
DATE21.08.23
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは、「相続税の申告状況」です。
【相続税にまつわる噂(?)】
・相続税を払っているのは、10件に1件にも満たない
・数年前に比べて、相続税を払っている割合は2倍に激増した
相続税について、よく耳にする噂(?)ですね。
なんだかインパクトのある数字ですが、結論から言えば、これらはいずれも本当です。
【2015年からの大きな変化】
2019年の被相続人数(亡くなった人)は約138万人です(2020年12月国税庁公表)。
このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約11.5万人なので、課税割合は約8.3%となります。ちなみに、ここ数年は8%台前半で推移しています。
たしかに、相続税を払っているのは「10件に1件にも満たない」わけですね。
しかし、2014年の課税割合は約4.4%だったのです(それ以前も、4%台前半程度で推移)。
すなわち、2015年を境に(数年前に比べて)、相続税を払っている割合は「2倍に激増した」わけです。
それはなぜか?鋭い方は、分かりますよね?
そうです。2015年からは相続税改正によって、遺産に係る基礎控除額が、以下のように大幅に引き下げられたからです。
2014年以前:5,000万円+1,000万円×法定相続人数
2015年以降:3,000万円+600万円×法定相続人数
各人の課税価格の合計額が、基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。
その基礎控除額が4割も引き下げられたわけですから、これは大きなインパクトとなり、相続税の課税割合が一気に増えたこともうなずけますね。
たとえば家族が、妻・子ども2人であれば、以前は8,000万円(5,000万円+1,000万円×3人)まで課税されなかったのが、今では4,800万円(3,000万円+600万円×3人)がボーダーラインとなっています。
これは都心に持ち家があって、預貯金もそこそこあれば、十分に越えてしまうラインと言えるかもしれませんね。
【課税価格・税額】
では、課税価格と税額について、その合計額を、2014年と2019年で比較してみましょう。
2014年:11兆4,766億円(課税価格) 1兆3,908億円(税額)
2019年:15兆7,843億円(課税価格) 1兆9,754億円(税額)
やはり改正前の2014年に比べ、2019年はかなり増加していますね。
【被相続人1人当たりの課税価格・税額】
では、被相続人1人当たりの課税価格と税額について、2014年と2019年で比較してみましょう。
2014年:2億 407万円(課税価格) 2,473万円(税額)
2019年:1億3,694万円(課税価格) 1,714万円(税額)
こちらは改正前の2014年に比べ、2019年はかなり減少しています。
これは、改正の影響により少額の納税者が増えたことによって、平均額が引き下げられたものですので、従来から課税対象となっている人にとっては、相続税額は増えていることでしょう。
いずれにしても、より多くの人が相続税と向き合う世の中になったと言えるでしょう。
【断片的な情報に踊らされないこと】
相続税の課税割合については、「10件に1件にも満たない」と聞けば安心し(油断し)、「2倍に激増した」と聞けば不安になることでしょう(必要以上にうろたえる)。
いずれも、真実ですから。
しかし、ネットや雑誌、テレビなどで出回る情報の多くは、そのような断片的なインパクトのあるものばかりです(ちょっと言い過ぎかもしれませんが、、、でも、ネットニュースなどはとくに近年、そのような傾向が顕著です)。
そんな世の中だからこそ、相続全体の正確な情報・知識をしっかり身につけ、自らの状況を分析し、判断・行動したいものですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏