節税にならない、負の資産とは・・・
DATE21.07.20
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは、「債務控除」です。
【負の資産を引き継ぐと、相続税を節税できる】
できることなら、借金等の「負(マイナス)の資産」は引き継ぎたくないもの。
しかし、事情があって引き継いでしまった場合には、相続税を減らすことができるのです。
たとえば、相続によって預金1,000万円を取得するも、被相続人の借金200万円と税金未払金200万円を引き継ぎ、さらには葬式代100万円を負担した場合には、相続税の課税対象は差し引き500万円(1,000万円-200万円-200万円-100万円)に減らすことができるのです。
このように、被相続人の借金・未払金・葬式代を引き継いだ(負担した)場合には、それらは取得した財産から差し引くことができ、相続税を節税できるのです。これを「債務控除」と言います。
【債務控除の対象とならないもの】
しかし、以下のものについては、たとえ引き継いだ(負担した)としても、取得財産から差し引けません。
すなわち、債務控除の対象とはならず、相続税の節税にもならないので要注意なのです。
『借金・未払金』
- 団体信用生命保険の付いた住宅ローン
⇒住宅ローンは借金だが、団体信用生命保険によって、債務者(被相続人)の死亡時にはローン残高はチャラになるので、債務控除の対象とはならない。
- 保証債務(主たる債務者が債務を履行しないときに、代わりに履行しなければいけない保証人の債務)
原則:将来、保証人の債務となることは不確実なので、原則として債務控除の対象とはならない。
例外:主たる債務者が返済不能となり保証人が債務履行をし、主たる債務者からその返還見込みがない場合には、債務控除の対象となる。
- 墓地、墓石、仏壇等の非課税財産を購入したときの未払金
- 相続開始後に発生した、相続財産の維持管理費用(税理士・弁護士報酬等)や遺言執行費用
『葬式費用』
- 香典返し費用
- 墓地・墓碑の購入費用・墓地の借入料
- 初七日・四十九日法要費用
- 遺体解剖費用
【債務控除ができない人】
あと、負の財産を引き継いだ(負担した)人であっても、以下の人については債務控除ができません、もしくは限定されているので要注意です。
- 特定遺贈で財産を取得した相続人以外の人
これは言い換えれば、相続人または包括遺贈で財産を取得した人が「負の財産」を引き継いだ(負担した)ときだけ、債務控除が使えるということです。
ちなみに遺贈とは、遺言によって財産を無償で与えることで、「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。
・包括遺贈:「Aさんに、財産の3分の1を遺贈する」のように、割合を指定して行う遺贈のこと。
・特定遺贈:「Aさんに、〇×不動産を遺贈する」のように、特定の財産を指定して行う遺贈のこと。
- 相続放棄をした人
ただし、相続放棄をした人であっても、その人が葬式費用を負担した場合には、その金額は遺贈等により相続した財産があれば、債務控除として差し引くことができます(借金・未払金は債務控除できない)。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏