ごえんをつなぐコラム

ブレイン・ストーミングでは良いアイデアは生まれない?

DATE21.06.08

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

一般的には「みんなでアイデアを出せばよいアイデアが生まれる」といわれます。そのための手段として、ブレイン・ストーミングが薦められています。

今回は、ブレイン・ストーミングの問題点と、「みんなで良いアイデアを出すための環境の整備」について取り上げます。

 

ブレイン・ストーミングとは?

ブレイン・ストーミング(以下、ブレスト)は、ユニークで新しいアイデアを生み出すことを目的に開発されたもので、今ではすっかりお馴染みです。

ブレストには、次の4つのルールがあります。

①批判厳禁
判断は排除すること。アイデアに対する批判は翌日まで押さえておく。

②自由奔放
「乱暴さ」が歓迎される。アイデアが突拍子のないものになるほどよい。調子はいつでも下げられるのだから、どんどん思い切った提案をすること。

③質より量
量が必要である。下手な鉄砲も数打てば当たる。

④アイデアの結合
結合と改良が大切である。自分のアイデアを出すばかりではなく、人の出したアイデアを改良したり、いくつかのアイデアを組み合わせて別のアイデアを作り上げる。
要は「とにかく数多くのアイデアを出すために、他人を批判せず、大胆な提案をし、さらにアイデア同士をつなげていこう」というわけです。

 

それぞれで考えたほうがよい?

しかしながら、研究者たちの実証研究によると、ブレストのパフォーマンスは必ずしもよくありません。みんなが一堂に会してブレストするよりも、各メンバーが個別に考え、それを集めてグループの成果とするほうが、アイデアの数が多く、独創的なアイデアの数も多かったのです。また、グループのサイズが大きくなるほど、ブレイン・ストーミングの成果は悪くなるということも明らかになりました。

 

ブレストが上手くいかない理由

なぜブレストは上手くいかないのでしょうか?その理由として、次のようなことが指摘されています。

・それぞれがアイデアを述べ、それを聞いていなければならず、自分自身のアイデアを練り上げることに集中できなくなります。

・他のメンバーの目を気にしてアイデアをしまいこんでしまい、大胆なアイデアを述べなくなります。

・結果責任はグループ全員に分散されるので、1人1人はさほど真剣にアイデアを考えたり議論したりしなくなります。これはグループの人数が多くなるほど顕著になります。

 

■成果を生むために必要なブレストの条件

ブレストでよいアイデアがでないのは、ブレスト自体が悪いのではなく、ブレストを行うための環境が整っていないからです。ブレストで成果を生み出すためには、次のようなことが必要です。

(1) 生産性を上げるために意識を集中させる環境をつくる
・1回の議論時間は45分から2時間までに留める。
・1つの主題に焦点を絞る、1つの話題に集中させ、別の話題に移らないようにする。
・小休止を入れたり、グループ単位での議論と、個人の思考を入れ替えたりする。
・あらかじめ議題をメンバーに提示し、ミーティングの前に自分の意見を考えておいてもらう。

(2) 挑戦意欲を引き出す適切な目標を設定する

(3) 各メンバーが安易に周囲の意見に流されないようにし、1人1人の自主性・独立性を確保する

(4) メンバーのエゴを融合する
・多様な専門性を持ったメンバーを揃え、即興を促す。
・グループの参加者は3人から10人程度に抑え、個人の貢献が分かるようにし、コミットメントを引き出す。

(5) 結果を出すという姿勢を求め、適度なプレッシャーを与える

(6) 進行役(ファシリテーター)は、各メンバーにルールを周知し守らせ、議論を先へ先へと推進させる

特にファシリテーターの役割は重要です。ミーティングでよいアイデアを出したいのなら、適切な能力を持ったファシリテーターを組織的に養成していく必要があります。

 

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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