ごえんをつなぐコラム

生前にもらったお金は、無視していいの?

DATE21.04.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回テーマは、「特別受益と寄与分」です。

 

【生前にお金をもらっていたら・・・】

亡くなったAさんの遺産は3,000万円、相続人は長男・二男・三男の3人としましょう。

この場合、法定相続分は3等分、つまり、それぞれ1,000万円となります。

しかし、長男が生前に、Aさんからマイホーム資金援助として1,200万円もらっていた場合、どうなるでしょうか?

それはそれで、やっぱり3等分だよね・・・と長男は言いたいかもしれませんが、それでは二男と三男は、納得いかないことでしょう。生前にもらったお金を無視して、遺産だけを分けるのは、どう考えても不公平ですからね。

 

【生前にもらったお金も、しっかり考慮する】

そこで、長男がもらった1,200万円は、遺産に持ち戻すというルールがあるのです。

具体的には、遺産3,000万円に、長男が生前にもらった1,200万円を足して、4,200万円とします。

そして、その4,200万円を法定相続分で分けて(3等分して)、長男については、そこから、生前にもらった1,200万円を差し引くのです。二男と三男はそのままです。

長男:(3,000万円+1,200万円)÷3-1,200万円=200万円
二男:(3,000万円+1,200万円)÷3=1,400万円
三男:(3,000万円+1,200万円)÷3=1,400万円

つまり、今回のケースでは、遺産3,000万円は、長男200万円・二男1,400万円・三男1,400万円と分けることで、生前の事情を踏まえ、相続人同士の公平を保つことができるのです。

ちなみに、特定の相続人が被相続人から受けた「婚姻、養子縁組のため、または生計の資本としての生前贈与」、もしくは「遺贈(遺言による財産の無償譲渡)」を特別受益といって、今回のように、遺産に持ち戻して計算することになるのです。

そして、長男がAさんから生前もらったマイホーム資金援助は、まさに、この特別受益にあたるわけです。

 

【生前に、財産維持・増加に貢献していた場合は・・・?】

それでは、特別受益とは反対に、生前に、被相続人の財産維持・増加に特別な貢献をした相続人がいる場合は、どうなのでしょうか?

その場合も、やはり、その事情を考慮しないと不公平ですよね。

たとえば、亡くなったAさんの遺産は3,000万円、相続人は長男・二男・三男の3人で、長男は生前、Aさんのお仕事を無償で手伝い、Aさんの財産の維持・増加に貢献した分の価値が1,200万円と認められたとします。

 

この場合、長男が貢献した1,200万円は、遺産から差し引くというルールがあるのです。

具体的には、遺産3,000万円から、長男が生前に貢献した1,200万円を差し引いて、1,800万円とします。

そして、その1,800万円を法定相続分で分けて(3等分して)、長男については、そこから、生前に貢献した1,200万円を加算するのです。二男と三男はそのままです。

長男:(3,000万円-1,200万円)÷3+1,200万円=1,800万円
二男:(3,000万円-1,200万円)÷3=600万円
三男:(3,000万円-1,200万円)÷3=600万円

つまり、今回のケースでは、遺産3,000万円は、長男1,800万円・二男600万円・三男600万円と分けることで、生前の事情を踏まえ、相続人同士の公平を保つことができるのです。

ちなみに、被相続人の事業に関する労務の提供または財産の給付、被相続人の療養看護等により、被相続人の財産維持・増加について特別な貢献をした相続人に、今回のように、相続分以上の財産を取得させる制度を寄与分といいます。

長男がAさんの事業に無償で労務を提供しているケースなど、まさに、この寄与分となるわけですね。

 

このように、「特別受益」「寄与分」のルールを踏まえて遺産分割することで、生前の事情を反映させて、相続人同士の不公平を避けることができるのです。

ぜひとも、知っておきたいルールですね。

なお、特別受益や寄与分は原則として相続人全員の話し合いで決めますが、話しはまとまらないときは、家庭裁判所に調停や審判を申し立てて、その額を決めてもらうことになります。

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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