ごえんをつなぐコラム

人は無能になるまで出世する!

DATE21.03.29

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

組織の病理を揶揄するものに「ピーターの法則」があります。これは「人は無能になるまで出世する」というものです。

 

■なんでうちの上司は無能なのだろう?

上司の悪口はサラリーマンの定番ネタです。もしそれが本当なら、おそらく世の中の上司のほとんどは無能ということになります。

ピーターの法則によれば、それはごく自然の成り行きなのです。手順を追って説明します。

・平社員が能力を発揮すれば係長に出世する。

・係長に昇進した者のうち、さらにその地位での能力を発揮すれば課長に出世するが、そうでない者は係長に留まる。つまり係長の地位にいる者は、結局は係長としての能力がない者ということになる。

・課長に出世した者のうち、さらにその地位での能力を発揮すれば部長に出世するが、そうでない者は課長に留まる。よって課長の地位にいる者は、結局は課長としての能力がない者ということになる。

・部長に出世した者のうち…(以下、同じことの繰り返し)

かくして役職者はすべからくその地位に沿った能力のない者によって占められるというわけです。これでは上司が無能者ばかりになっても仕方がありませんね。

ピーターの法則はかなり極端な見解(ある種のユーモア)ですが、優れたユーモアはいつも核心を突くものです。

 

■ピーターの法則に陥らないためには?

さて、ピーターの法則に陥らないためには、どのようにすればよいでしょうか。「ピーターの法則 創造的無能のすすめ」(ダイヤモンド社)の著者であるローレンス・J・ピーターとレイモンド・ハルは、自分が無能になるポジションに置かれるのを回避するために、「自ら進んで昇進を断る」あるいは「昇進させられないように変人・無能ぶりを発揮する」ように薦めていますが、常識的に考えて実際にはかなり困難でしょう。

しかしながら、ピーターの法則は昇進しなければ給与が上がらないことが多いという現在の人事制度を考えさせるきっかけにはなります。

担当者としては優秀なのに管理者には向いていないという方は多いです。管理者の向き不向きということでは、確実に半分の人が不向き(平均以下)なわけですから。

現実的な会社としての対応としては、まず複線型人事制度の導入が考えられます。技術系の職種では、管理職コースとは別に専門職コースが設けられているケースが多く見られますが、事務系の職種でももっと拡大させるべきでしょう。営業系の会社では、トップセールスマンの給与が役員よりも高い企業が現に存在します。

 

■コンピテンシーモデルを昇進に使う

また、「昇進前の管理者教育を徹底する」「その地位に求められる管理能力を事前に示した者のみ出世させる」といったことも妥当な方策でしょう。後者についていえば、コンピテンシーモデルの考え方を応用すべきです。

コンピテンシーモデルとは、社内で高い成果を上げている人にヒアリングを行ったり、観察したりしてその行動特性をモデル化したものです。モデル化された望ましい行動特性をとれば評価が上がります。

担当者として(あるいは下位管理者として)優れたパフォーマンスを上げた人物を昇進させるのではなく、ポストごとにコンピテンシーモデルを用意しておいて、次のポストに見合う行動を示した人間を昇進させるのです。

個々の適性を考えた人材の有効活用が望まれます。

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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