相続税の基礎控除はケタ違いだけど・・・
DATE20.12.23
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは、「相続税の基礎控除」です。
【相続税の基礎控除はケタ違い】
税金における基礎控除とは、誰でも無条件に、課税価格から差し引いてもらえるものです。
たとえば、所得税は最高48万円、住民税は最高43万円、そして贈与税は110万円となっています。
そして、相続税ではなんと「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と、他の税金と比べて、ケタ違いに高額なのです。
この基礎控除額を超えなければ、税金はかからず、原則として申告は不要となります。
【「法定相続人」の人数カウントに、要注意!】
ただし、相続税の基礎控除については、その計算式にある「法定相続人の数」に要注意です。
この「法定相続人」とは、相続税の計算上カウントする相続人のことで、一般に用いられる民法上の相続人とは違うのです。
いや、基本的には民法上の相続人と同じなのですが、「養子」と「相続放棄」の扱いが異なります。
法定相続人が1人増えれば基礎控除額は600万円アップするわけですから、そのあたり、意図的に増やされないようにしているのです。
・養子
民法上の相続人:人数の制限なし
相続税法上の法定相続人の数:人数の制限あり(実子がいる場合は「1人まで」、実子がいない場合は「2人まで」)
養子の数には制限をつけておかないと、節税のため、いくらでも養子を増やされてしまいますからね。
なお、相続税法においても、養子縁組そのものには制限はなく、あくまでも、「法定相続人の数」にカウントできる養子の人数に制限があるということです。
・相続放棄
民法上の相続人:放棄した人は相続人とならない
相続税法上の法定相続人の数:放棄した人も法定相続人の数にカウントされる(相続放棄は「なかったもの」として扱われる)
たとえば、亡くなった人の身内が、「子1人と、兄3人」だとしましょう。
この場合、民法上の相続人も相続税法上の法定相続人の数に含める相続人も、「子」のみとなります(血族相続人には優先順位があり、第1順位の「子」がいるので、第3順位の「兄」は相続人とはならない)。
では、子が相続放棄すれば、どうなるでしょうか?
民法では、相続放棄した人は、最初から相続人とはなりません。
なので、今回ケースでは、第1順位の「子」が放棄することで、第3順位の「兄」が相続人となり、民法上の相続人は「兄3人」となります。
すなわち、民法上では意図的に相続放棄することで、相続人を増やすことができるケースもあるわけです。
しかし、相続税の計算上は、相続放棄は「なかったもの」として扱われるので、そのように意図的に相続人を増やすことができません。
なので、子が放棄したとしても、相続税の計算に含める法定相続人は「子」のみのままです。
【「法定相続人の数」は、相続税の計算に大活躍】
今回紹介した「法定相続人の数」は、相続税の計算において、基礎控除額の計算以外にも、以下の計算に使われます。
・生命保険金等の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)
・退職手当金等の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)
・相続税の総額の計算
→相続税の計算過程では「法定相続人が、その法定相続分に応じて遺産を取得したものとして計算する」
いずれも大切な計算です。
法定相続人が1人違えば、相続税計算において500万円(非課税限度額)、600万円(基礎控除額)と違ってくるので、その差は大きいです。
相続税をシミュレーションするときは、おおいに気を付けましょう。
ちなみに、相続関連の資格試験でも、この「民法上の相続人」と「相続税法上の法定相続人の数」は、ひっかけやすいところなので、よく問題にも出てきます。
その意味でも、相続人という言葉が出てきた場合には、どちらの相続人のことなのか、常に意識しておきたいところですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏