遺産の使い込みに、要注意!
DATE20.11.20
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは、「遺産の使い込み」です。
【使い込んだ分は、遺産分割しなくてよかった】
親の遺産総額が1,000万円で、兄弟4人が相続人のケースを想定してください。
このとき、兄弟の1人が遺産のうち200万円を、遺産分割前に使い込んでいたとします。
これまでは(2019年6月30日までは)、その使い込んだ200万円は遺産ではなく、遺産分割の対象とはなりませんでした。
よって、残りの800万円(1,000万円-200万円)を、兄弟4人で分けることになりました。
つまり、遺産を使い込んだ相続人も、その使い込んだ200万円に加えて、残りの遺産のうち200万円(800万円÷兄弟4人)を取得することができたのです。
これは、とても不公平ですよね。
しかし、その使い込んだ200万円を遺産に組み戻すためには(遺産分割の対象とするためには)、「相続人全員」の同意が必要でした。
これは当然、使い込んだ相続人の同意も必要なわけで、現実的ではないですよね。
となると、他の相続人が、その使い込まれた分をどうしても取り戻したいとなると、これは訴訟等を起こすしかないわけです。ただ、訴訟等となると、時間も労力も費用もかかり、かなり大変であることは言うまでもありません。
すなわち、使い込まれた分を取り戻すのは、相当にハードルが高いものだったのです。
なので、これまでは、使い込んでしまった人勝ちみたいなところがあったのです。
【使い込んだ分は、簡単に、遺産に組み戻すことができるようになった!】
それが2019年7月1日以降、状況が大きく変わりました。
法改正によって、遺産分割前の遺産使い込みがあった場合、「使い込んだ相続人以外の相続人全員」の同意があれば、その使い込んだ分を、遺産に組み戻すこと(遺産分割の対象とすること)ができるようになったのです。
冒頭の例で言えば、使い込んだ200万円は遺産に組み戻して、(使い込まれる前の)1,000万円を、兄弟4人で分けることとなります。
ですので、1人の取り分は250万円(1,000万円÷兄弟4人)ですね。
その際、遺産を使い込んだ相続人については、その使い込んだ200万円は「すでに受け取った財産」となります。よって、遺産を使い込んだ相続人が、遺産分割で受け取れるのは50万円(250万円-200万円)だけとなります。
すなわち、現にある800万円は、使い込んだ相続人は50万円、その他の相続人(3人)はそれぞれ250万円と分割されることとなるのです。
いかがでしょう?
この法改正によって、遺産の使い込みがあった場合でも、公平な遺産分割がスムーズに行えるようになったということですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏