ごえんをつなぐコラム

自分の立場が弱い場合の交渉テクニック~あきらめずに可能性を探る

DATE20.09.29

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。今回は「力関係で相手のほうが上の場合の交渉術」を取り上げます。

 

■自分が弱い立場にあることを明かさない

自分のBATNA(Best Altenative To a Negotiated Agreement:「交渉が決裂した時の対処策として最も良い案」のことで、交渉にあたっての最低条件に相当)が貧弱であることを相手に知られてはいけません。たとえば「私には時間がありません」「何でもおっしゃってください」などというと、切羽詰まった感が満載で、こちらのBATNAが貧弱であることがバレバレです。

よって、同じメッセージでも言い方に気をつける必要があります。たとえば「私どもは迅速に処理されることを望んでいます」「多少の都合をつけることができます」などと多少余裕がある言い方をするといったことです。

 

■相手の弱点を探す

力関係で上の相手にも、案外、弱点があることがあります。たとえば大手の取引先に営業マンであるあなたが呼ばれ、相手から「オタクは他社よりも価格が高い。あと10%値下げしてくれないと取引しない」と迫られたとします。

あなたをわざわざ呼んだのだから、相手としてもおそらく取引の継続を望んでいるはずです。もしかしたらあなたの会社の製品が他社よりも優れていることを認めているのかもしれないし、業者を切り替えることが煩わしいのかもしれません。それが相手の弱点になります。

 

■独自の価値提案をする

価格交渉を迫られた場合のセオリーは、価格以外のこちらのメリットを強調することです。品質、納期、付加的なサービス、支払条件など様々なことが考えられ、それをアピールします。

 

■返報性の原則に沿う

人間には返報性の原則(相手から先に何かをされると、お返ししたくなる)があるといいます。相手にとっても、こちらに一方的に要求を飲ませることには、心理的な抵抗があるはずです。よって、こちらの希望に対して譲歩する可能性は十分にあります。たとえばこちらとしては価格面では折れるが、代わりに支払条件を良くしてもらう余地があるかもしれません。

 

■交渉妥結にこだわらない

当たり前ですが、もっとも重要なのは、その取引が自分にとって本当に必要なのか考えてみることです。必ずしも交渉をまとめる必要がないという姿勢が、交渉力を生みます。

 

■脅しや最後通牒への対処法

交渉を重ねているうちに、相手の担当者が「これ以上は話し合っても無駄です。私たちの条件は○○です。あとはそちらが受け入れるかどうかです。」などといったように、脅しや最後通牒を突きつけてくる場合があります。このようなときの対抗策には次のようなことが考えられます。

・相手の最後通牒は、苛立ちや無知、あるいは対面を保つために行っている可能性があります。こちらが最後通牒に敏感に反応してしまうと、相手としてもそれを撤回することが難しくなります。それよりも時間を空けてその間に相手が撤回できる余地を残すほうが賢明です。

・相手の担当者はあくまで相手の組織の交渉代理人です。あまりに強情なら相手の上司の同席を求めるのも手です。相手の担当者は自分のメンツがなくなることを恐れて脅しを引っ込めるかもしれません。また交渉がまとまらないというリスクを相手に知らしめることもできます。仮に上司が同席したとしても、相手組織としては取引継続を望んでいるのであれば、脅しの部分を撤回することがありえます。相手の担当者としては、一度、脅しをかけてしまった以上は、撤回しにくいでしょうから、他の誰か(上司)のほうが撤回しやすくなります。

 

【参考】
「交渉の達人」ディーパック・マルホトラ、マックス・H・ベイザーマン著 日本経済新聞社

 

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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