相続ルール、40年ぶりの大改正!
DATE20.08.21
さて、先月(2020年7月)の10日、「自筆証書遺言の保管制度」がスタートしました。
これまでは、自筆証書遺言は自分で保管しないといけなかったので、紛失や改ざん、そして、「亡くなった後に見つけてもらえない」という恐れがありました。
しかし、この保管制度(法務局で預かってもらえる制度)を利用することで、そういった心配がなくなるのです。また、家庭裁判所の検認が不要となることも、大きなメリットと言えるでしょう。
【40年ぶりの大改正】
ご存じの方も多いと思いますが、2018年7月に成立した改正相続法(40年ぶりの大改正と言われています)によって、2019年から2020年にかけて、相続に関するルールが大きく変わっています。
冒頭の「自筆証書遺言の保管制度」も、その新ルールの一つです。
そこで今回は、(今更ながらではありますが)2019年以降にスタートした、相続に関する主な新ルールを、確認していきたいと思います。
皆さんは、どれだけご存じでしょうか?
【2019年1月13日スタート】
自筆証書遺言の方式緩和がスタートしました。
これまでは、自筆証書遺言は「全文」を自書しなければいけなかったのですが、「財産目録」については、パソコン等での作成がOKとなりました。
多くの不動産や株式などを持っている人にとっては、遺言書作成の手間は、これでかなり省けるでしょう。
【2019年7月1日スタート】
多くの新ルールは、2019年7月1日にスタートしており、その主なものは以下のとおりです。
・生前贈与した自宅の持ち戻し免除
婚姻期間20年以上である夫婦間において、生前に贈与された自宅については、遺産分割の対象とはならなくなりました(持ち戻し免除となる)。
・預金の単独払戻
従来は、遺産分割をするまでは(もしくは相続人全員の同意を得るまでは)、被相続人の預金は、原則として、単独で払い戻すことはできませんでした。
それが改正によって、相続人であれば、「預金額×1/3×当該相続人の法定相続分」(一金融機関につき最高150万円)まで、遺産分割前であっても(相続人全員の同意がなくても)単独で払い出せるようになりました。
・介護に尽力した、相続人以外の親族への配慮
従来は、相続人以外の人が、被相続人の介護をしても、それは報われることはありませんでした。
例えば、長男の嫁が、義母の介護に尽力してきても、長男の嫁は相続人でないため、遺産はもらえませんでした。
それが改正によって、被相続人の療養看護等を行った「相続人以外の被相続人の親族」は、相続人に対して、金銭を請求できるようになりました。
・遺留分制度の見直し
遺留分侵害額の弁償が、金銭によるものとなりました。
※遺留分については、第1回コラム(兄弟姉妹は、なぜ「相続排除」できないのか?)参照
・相続財産の登記の効力に関する見直し
不動産を取得した場合、法定相続分を超える分については登記をしないと、第三者に対抗することができなくなりました。
【2020年4月1日スタート】
配偶者居住権がスタートしました。
配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が、その自宅に住み続けることができる権利のことです。
これまでは、配偶者が(自宅に住み続けるために)自宅を相続すると、自宅以外の財産の取り分が少なくなって、将来の生活費が不足する恐れがありました。
そこで、自宅を「配偶者居住権」(配偶者が取得)と「所有権」(配偶者以外の相続人が取得)に分けることで、配偶者の住む権利を守りつつ、配偶者が一定の財産を取得できるよう(※)にしたのです。
※配偶者居住権は、所有権より資産価値は低いので、その分、他の財産の取り分も増える
ちなみに、配偶者居住権には「配偶者短期居住権(期間限定)」と「配偶者居住権(一生涯も可能)」の2種類あります。
【2020年7月10日スタート】
自筆証書遺言の保管制度がスタートしました(内容は冒頭のとおり)。
この制度がスタートしたことで、今回改正による新ルールが、すべて走り始めたわけですね。
今回のテーマは少し難しかったかもしれませんが、また機会があれば、とくに私が気になる新ルールについては、今後の動向を踏まえた上で、しっかり掘り下げてピックアップしたいと思います。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏