口約束での「あげるよ」は、いつでも解除される
DATE20.07.20
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回テーマは、「贈与」です。
贈与とは、「当事者の一方が、ある財産を無償で相手方に与える行為」のこと。
相続とも、大いに関連するテーマですが(「相続検定試験」でも頻出項目)、意外な盲点もあったりするので、ぜひ、今回コラムで知識を確認してください。
【贈与とは、「契約」である】
贈与とは、厳密には、贈与契約のことです。
さらに言えば、贈与契約は諾成契約と言って、「当事者間の合意」が必要となります。
と、いきなり小難しい用語がポンポン出てきましたが、つまりは、あげる側(贈与者)が「あげるよ」と意思表示をして、それに対して、もらう側(受贈者)が「もらうよ」と意思表示することで、初めて贈与は成立するということです。
あげる側が一方的に「あげるよ」と言っても、また、もらう側が一方的に「ちょうだいよ」と言っても、その相手方が、何も意思を示さなければ、贈与は成立しないのです。
そして、その意思表示は、必ずしも書面である必要はなく、口頭でもいいのです。
すなわち、お互いが、「あげるよ」「もらうよ」との意思表示さえしっかりすれば、「口約束」でも、贈与契約は成立するのです。
【口約束には、気を付けよう、、、】
但し、口約束の場合には、「あげるとは言ったけど、やっぱり、あげるのはや~めた」と、いつでも、一方的に、契約を解除される恐れがあるのです。
一旦、あげると言っておきながら・・・と苦々しく思うかもしれませんが、法律上、それはOKなのです。
もっとも、「すでに履行した部分」については、解除はできません。
すなわち、すでに相手にあげてしまったものについては、さすがに、「やっぱり返して」と言うことはできないとわけですね。
ちなみに、口約束の契約解除については、各当事者がいつでもすることができます。
つまり、あげる側からだけでなく、もらう側からも、一方的に、「あげるのや~めた」「もらうのや~めた」と言うことができるのです。
口約束はお手軽なのですが、これではちょっと、お互いに不安ですよね。。。
その点、書面での贈与にしておけば、口約束とは違って、一方的に「解除」はできません。
そもそも、口約束だと、「言った」「言わない」の水掛け論になってしまうこともあるので、無用なトラブルを避けるためにも、大切な贈与については、書面にしておくことをお勧めします。
【贈与と民法改正】
それでは最後に、ちょっと細かい話を。
今回コラムのポイントである、「(書面によらない)口約束の贈与の解除」ですが、この「解除」は、もともとは「撤回」でした。
これが2020年4月施行の民法改正によって、「撤回」から「解除」に変わったのです。
もっとも、ここでの「撤回」とは、もともと「解除」と同内容だったので、法律的な意味合いに変わりはなく、ただ用語が変わったと捉えておけば大丈夫でしょう。
また、今回の民法改正では、贈与の対象も改正されました。
これまでは、条文には「自己の財産」とあったのが、「ある財産」と改正されたことで、自分の財産だけでなく、他人の財産も、贈与できることになったのです。
もっとも、これは以前から判例では認められていたことなので、実務的にはそれほど影響はないと思われますが、法律の文言が変わったことには注意が必要ですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏