交渉に臨む前に意識しなければいけないこと~交渉の3つのパターン
DATE20.05.27
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザーの対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
交渉については学問的な研究分野として確立されており、ロースクールやビジネススクールで広く教えられています。
今回は、交渉について、まず最初に知っておきたい「交渉の3パターン」を取り上げます。
■交渉の目的は?
交渉の目的はなんといっても「自分の望む利益を実現するため」です。瑣末なことで互いに感情的にエスカレートし、まとまるはずの交渉が暗礁に乗り上げ、お互い利益を取り損ねることがよく見られますが、交渉にあたっては、「どうすれば自分の利益を最大化することができるか」を常に念頭において、冷静に対処することが絶対条件になります。
さらに自分の利益を最大化するためには「自分と交渉相手との相互理解を通じて良好な関係を築き、相互の利益を最大化する」ことが望まれます。
交渉術というと、とかく駆け引きのテクニックを想起しがちですが、相手を騙して一時自分の望む利益を得たとしても、今後、相手はみなさんとの取引を望まなくなり、本来得られたであろう利益を逸しかねません。もちろん、みなさんについての悪い評判も広まるでしょう。
交渉では大きな視点で「相互の利益」を考える必要があります(もっとも、相手が不誠実な態度を繰り返し、自分を守る必要がある場合や、取引が1回限りの場合は、駆け引きテクニックは有効に機能します)。
■交渉のパターン
交渉には、大きく3つのパターンがあります。
(1)分配型交渉
「限られたパイをめぐって、相互が自分の取り分(利益)の最大化を図るために行う交渉」のことです。
自分が得をすれば相手は必ず損をするし、相手が得をすれば自分は必ず損をするというパターンです。価格交渉では、安い価格になれば買い手が得をし、売り手は損をします。
(2)利益交換型交渉
「パイは限られているが、自分が重要でない部分は譲り、その代わり自分にとっては重要だが相手にとっては重要でないものを引き出す」というものです。
取引で、売り手には「代金をその場で現金で欲しい」というニーズがあり、買い手には「できるだけ安く買いたい」というニーズがあったとします。この場合、売り手側が多少価格を安くする代わりに、買い手側からその場での現金支払いを求めるという交渉が成り立ちます。
(3)創造的問題解決型交渉
「交渉当事者が協力し合ってパイを拡大する」というものです。パイを拡大すれば、互いの取り分は大きくなります。
創造的問題解決型交渉の例としては、企業間の連携があります。争うのではなく共同で事業を行うことで、全体の利益を高める(その結果、自社の利益を高める)ことができます。
■この交渉はどのパターンなのか?
分配型交渉は「WIN-LOSE型」、利益交換型交渉と創造的問題解決型交渉は「WIN-WIN型」といえます。通常、交渉というと、分配型交渉を想起してしまいがちですが、意外とそうでないことも多いです。単に「どれだけ相手の譲歩を引き出すか」だけに関心を持ってしまうと、視野が狭くなり、その結果、望む利益を得られなくなります。
創造的問題解決型交渉はなかなか難しいかもしれませんが、利益交換型交渉の可能性は十分にあります。この場合、「自分が譲歩できない条件」「自分が譲歩できる条件」「相手が譲歩できない条件」「相手が譲歩できる条件」を整理することが大事です。
良い成果を得るためには、まずは「今行おうとしている交渉はどのパターンなのか」をよく考えてみることが必要です。
中小企業診断士
三枝 元