ごえんをつなぐコラム

厚生年金保険の標準報酬月額が改定されました。

DATE20.05.08

みなさま、こんにちは。社会保険労務士の原田 悠太郎です。

 

厚生年金保険料は、「標準報酬月額」という、月当たりの報酬を一定の金額ごとに区切ることによって各々グループ分けした額に基づいて納付する仕組みが採用されています。

例えば、月当たりの報酬が195,000円の方は、その195,000円に基づいて保険料を納付するのではなく、標準報酬月額=20万円というグループに割り当てられることにより、その月の報酬相当額を20万円として、厚生年金保険料を算定するという仕組みです(この標準報酬月額や等級の区分方法については日本年金機構等のサイトなどで見ることができます)。また、年金の受給者となったときも、老齢厚生年金や障害厚生年金、遺族厚生年金などの額は、原則としてその人の過去の標準報酬月額等に基づいて算定されます。要は、「標準報酬月額に基づいて保険料を納付し、受け取る年金額も基本的にはその標準報酬月額に基づいて算定される」ということです。

 

さて、2020年4月現在では、その厚生年金保険の標準報酬月額の上限は31級の62万円とされており、月当たりの報酬が605,000円以上の方は、その額が605,000円だろうと、100万円だろうと、1億円だろうと、上限の62万円として取り扱うこととされています。しかし、2020年9月から、厚生年金保険に係る標準報酬月額に32級という、もう1等級上のグループが設定されることとなりました。この32級に該当することとなるのは、月当たりの報酬が635,000円以上の方とされており、標準報酬月額は65万円として取り扱うこととされます。端的にいえば、月当たりの報酬が635,000円以上の方にとっては、従来は62万円として厚生年金保険料が算定されていたところ、65万円として厚生年金保険料が算定されることとなりますので、月々の保険料負担は上がることとなります。

 

しかし、保険料負担が上がったのは保険料率が変更されたわけではなく、標準報酬月額がランクアップしたことによるものである、という部分が今回の話題のポイントです。標準報酬月額が62万円から65万円にランクアップした、ということですので、確かに月々の保険料負担は増えるかもしれませんが、より高額で標準報酬月額が記録されていくこととなりますので、将来受給することのできる年金額はその分増額されることとなります。

 

世間では年金問題の話題として、「貰える年金額が少ない!」というものが挙げられますが、貰える年金額が少ないと感じている方にとっては、より高い等級の標準報酬月額が設定されることにより、将来の年金額を増額させることができる願ってもないチャンスとなります。

 

端的にいえば、良くも悪くも、厚生年金の年金額は自分が保険料を納めた額に比例して算定されるものですから、高額な年金額を受給することができるのは、それだけ厚生年金の保険料を納めた結果であり、低額だと感じるのであれば、それだけ厚生年金の保険料の納付額が自分が希望する受給額を得るためには足りなかった、という話です。つまり、年金の受給額は自己責任でどうとでもできる、ということですから、この点についてはあまり年金制度に文句を言うことができませんね。身を委ねていれば誰かが助けてくれる時代は、もう終わったのかもしれません。

社会保険労務士

原田 悠太郎

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