ごえんをつなぐコラム

死亡保険金は、誰のモノ?

DATE20.04.23

こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの藤原久敏です。

死亡保険金は、保険契約時に指定された保険金受取人が受け取ります。

これはそのとおり、問題ありませんよね?

 

ただ、死亡保険金は、保険金受取人がいったんは受け取るものの、「あらためて、相続人全員で分けるもの(つまり、死亡保険金は相続人全員のもの)」と誤解している人は少なくありません。

 

【死亡保険金は、受取人固有の財産となる!】

いいえ、死亡保険金は、分ける必要はありません。

なぜなら、死亡保険金は「元々、死亡した人(被相続人)が持っていた相続財産」ではなく、死亡した時点で発生する「受取人固有の財産」とされるからです。

 

すなわち、死亡保険金は、ハッキリと「受取人」のモノなのです。

 

ですので、相続放棄していても、保険金受取人となっていれば、死亡保険金は受け取れます。

たとえば、契約者・被保険者が夫で、死亡保険金受取人が妻となっていれば、夫が死亡したときには、妻は夫の相続を放棄していたとしても、死亡保険金はしっかり受け取れるのです。

相続放棄していると、死亡保険金も受け取れない・・・これも誤解の多いところなので要注意ですね。

 

【死亡保険金は、遺産分割の対象外!】

受取人固有の財産とされる死亡保険金は、他の相続財産とは区別され、遺産分割の対象とはなりません。

つまり、遺産分割協議で話し合うこともなく、また、遺留分(一定範囲の相続人に認められた最低限の取り分)の計算にも入ってはこないのです。

 

そして、死亡保険金は、保険会社に請求すれば、受取人に直接支払われます。

これが相続財産だと、たとえ預貯金であっても、すぐには引き出せずに(相続人同士の話し合いや、出金手続きに時間・労力を要することも)大変なのです。

死亡保険金であれば、他の相続人の同意なしに、比較的短期間で受け取れるので、とても便利。

なので、「この人に多めに財産を渡したい」のであれば、遺言ではなく、保険を活用するのも有効な手段なのです。

 

【でも、死亡保険金があまりにも高額な場合は・・・】

さて、ここからが、今回コラムのポイントです。

 

たとえば、死亡保険金1億円、相続財産(預金)1億円のケースを想定してください。

この場合、ここまで説明したとおり、保険金受取人となっている相続人が、死亡保険金1億円を「固有財産」として受取り、その上で、相続財産(預金)1億円を相続人全員で分けるとなると・・・これはあまりにも不公平ですよね。

 

死亡保険金は遺産分割の対象とはならない、と説明しました。

 

しかし、このように死亡保険金があまりにも高額な場合には、死亡保険金は特別受益(一部の相続人が、被相続人からの遺贈や生前贈与によって特別に受けた利益)に準じて、「持戻し」の対象となるのです。

その場合には、死亡保険金は遺産分割の対象となり、そうなると、遺留分の算定基礎財産にも入ってくるわけです。

 

もっとも、そんな例外が認められるかどうかは、ケースバイケース。

過去の判例では、「死亡保険金額が遺産総額の50%を超えてくる」と、特別受益と認定される可能性が高いようですが、相続人の生活実態等の要素も絡んでくるので、そのあたりの判断は難しいところ。

ですので、基本的には(教科書的には)、「死亡保険金は”原則として”遺産分割の対象とはならない」との認識でよいのですが、そんな例外もあると、頭の片隅に入れておいて損はないかと思います。

 

【相続税の対象にはなるが、非課税枠がある】

ちなみに、相続税の計算においては、死亡保険金(被相続人が契約者・被保険者の場合)は「みなし相続財産」として、相続税の対象となります。

ただし、「一定の非課税枠(500万円×法定相続人の数)」が認められます。

もっとも、これは受取人が相続人の場合に認められるのであって、相続放棄した人は(相続人ではないので)認められないので要注意です。

このあたりはご存知の方も多いかと思いますが、一応、念のために付け加えておきました。

 

ファイナンシャル・プランナー

藤原久敏

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