老齢年金は、65歳になったらクジ引きをして、2人に1人の確率で当選した人だけもらえる仕組みにすれば良い
DATE19.12.27
みなさま、こんにちは。社会保険労務士のマギー恵太こと、原田 悠太郎です。
タイトルでは突然の爆弾発言がありましたが、みなさんはどう思いますか?
今回は敢えて、挑発的な書き方でコラムを進めたいと思います。
どうやら我々は、年金制度に対して大きな勘違いをしているようです。
年金制度への批判的な意見のメジャーなものとして、「高い保険料を払っているのに、安い年金しかもらえないじゃないか!」というものがあります。
果たしてそれは本当でしょうか?
具体例を挙げてお話をしましょう。老齢基礎年金の満額は、現在約78万円です。では、老齢厚生年金についてはどうでしょうか。
例えば、平均標準報酬額(大雑把にいえば、厚生年金保険加入中のすべての期間の月収相当額+賞与額の総額を、月数で割り戻したもの)が40万円、加入期間を480月(40年)とします。
老齢厚生年金の額は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算されますから、
この方の場合、「40万円×5.481/1000×480月=1,052,352円」となります。
前述の老齢基礎年金と合わせると、老齢年金として年間約183万円受給できるということになります。
年間約183万円ということは、月額にすると約15万円です。
家賃を払って、食費と光熱費と消耗品と…と考えると、そんなに満足な額とはいえないかもしれません。そこだけを見ると、「年金は少ない」と感じるでしょう。ところでこの方の場合、いったい年金保険料をいくら納めてきたのでしょうか。
厚生年金保険料率は現在、18.3%とされていますが、実際に本人が懐を痛めて納付する分は、半分の9.15%です。
平均標準報酬額は40万円、加入月数は480月ですから、
「40万円×9.15%×480月=17,568,000円」を厚生年金加入中に納付したことになります。
これを原資と考えた場合、年間で約183万円ずつ受給することになりますから、
「1,756.8万円÷183万円=9.6」となり、約10年弱で自力で納付した保険料の分は使い果たすこととなります。65歳から受給すると、75歳の時点で使い切るということです。
平成30年簡易生命表によれば、65歳時点の平均余命は、男性で19.70年、女性で24.50年とされていますので、少ない方の約20年と考えても、前述の通り、自力で納付した保険料は約10年弱で使い果たしますから、残りの約10年分は国や会社が負担していることになります。
ご存知でしたか?自分で払った保険料分は、たった10年で使い果たすということを。
それでもまだ、「高い保険料を払っているのに、安い年金しかもらえないじゃないか!」と言えますか?
今回のコラムのタイトルは、
「老齢年金は、65歳になったらクジ引きをして、2人に1人の確率で当選した人だけもらえる仕組みにすれば良い」でした。
2人に1人が当選する仕組みにすれば、1人は受給し、1人は無年金になりますので、抽選が極端に偏らない限りは、平均で見ると約20年分の原資が確保できることになるわけです。
先程の試算例をもとにすれば、約10年で使い果たす予定だったものが、2人分を1人に給付されることになるので、約20年もたせることができるようになります。または、給付額を重視するならば、約10年間、月額約30万円という高水準で給付するということも考えることができます。
そうはいえども、現実的には、抽選などという手段は採ることはできませんよね。もちろんこのコラムを執筆した私だって、本気でそんな意見を持っているわけではありません。そうなれば、限られた資源を、みんなで仲良く分けるしか方法はないわけです。
みんなが長生きできる状況の中で、この“痛み分け”は甘受せざるを得ないわけです。
少子高齢化を軸とする老後2,000万円問題も、年金不安も、少し勉強すれば予想できたことであるにもかかわらず、国に任せきって勉強をすることすら放棄した我々への、当然の報いのように見えてなりません。自分の人生に関わることを誰かに任せっきりにしている以上は、年金問題に限らず、世の中のすべての問題が解決しないと感じるのは、私だけでしょうか。
本年最後のコラムは多少刺激的な書き方になりましたが、身近な年金問題をきっかけに、あらゆる社会問題について考えるきっかけになれば、とても嬉しく思います。
来年も、年金を起点に、様々なトピックについてコラムを書いてまいりたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
社会保険労務士
(マギー恵太こと)原田 悠太郎