「老後2,000万円問題」から考える、「年金制度はおかしい!」はホントにホント?
DATE19.08.16
みなさま、はじめてお目にかかります。
社会保険労務士の原田 悠太郎と申します。
私は現在、資格の学校TACにて社労士講座の講師をしながら、一方で芸の世界にも飛び込んでおり、「縦縞のハンカチが横縞になる」手品でおなじみのマギー司郎の弟子“マギー恵太”としても活動しております。
芸で身を立てることはとても難しいことですから(私も修行中の身です)、こういった安定のしづらい生活を送る人間にとって、日々の生活への不安はもちろんのこと、特に老後への不安は大きいものです。というのも、自営業者の年金は国民年金だけとなり、基本的には上乗せ給付である厚生年金は支給されないからです。
国民年金は満額受給できるとしても、年間780,100円(令和元年度)ですので、1月あたりの受給額は約65,000円となります。私のような自営業者が将来この額で老齢年金を受給できると想定しても、この年金収入のみで生活していくというのは厳しいものがあり、老後の生活に不安が残ります。
一方、厚生年金に加入する形となる会社員の方々の場合は、国民年金と合わせて厚生年金も受給できるので、退職金を貰って、年金もあるから老後も安泰…
と思いきや、そんな方々からもここ最近、不安が叫ばれ始めました。
金融庁が発表した、いわゆる、
「老後2,000万円問題」です。
<「老後2,000万円問題」から年金の考え方を変えてみる>
「老後2,000万円問題」は、老後の費用のすべてを年金に依存するという状況で算出されています。もちろん、老後の費用がすべて年金で賄えるに越したことはないのですが、高齢化の進展は急速であり、少子化で支え手が少なくなっていることを考えれば、その費用のすべてを年金で賄うことは、現実的にはとても厳しい状況にあると言えます。
そこで私は年金について、「考え方を変えてみる」ことが重要だと考えています。
これは批判的に「年金に期待するのはやめましょう」ということではなく、「年金の魅力を考えてみる」ということです。
<年金の“魅力”とは?>
私は老齢年金について、「定期的に終身支給されること」が最大の魅力だと考えています。平たく言えば、「死ぬまで定期収入がある」という点です。
もし年金制度が存在せず、定年時点での貯蓄のみで老後を生き抜く、ということになると、端的に言えば、「貯蓄が底を尽きるのが先か、自分が天に召されるのが先か」という、言わば‘’チキンレース”を強いられることになります。
一方、ささやかであっても老齢年金という定期収入があれば、「定期収入+貯蓄」で家計を考えていくことができます。これは会社員の方に限らず、自営業の方のように国民年金のみの受給となる方であっても、「一生現役」という意気込みの部分に老齢年金が加われば、老後の不安を和らげることに繋がります。
また、年金の給付額は毎年度、見直しが行われます。ざっくり言うと、賃金や物価の変動によって給付額の見直しが行われる仕組みになっていますので、年金制度はインフレ対応機能も備えています。そう考えると、むしろ年金制度はとても魅力的な制度と言えるのではないでしょうか。
<まずは年金制度について「知る」ことが大切>
最近は「老後2,000万円問題」の影響もあり、年金制度への批判的な意見が特に目立っています。しかし、年金制度は本当に「おかしい」のでしょうか。手品を覚えようとするときには、タネと仕掛けを覚えないと手品を成功させることはできませんが(まぁ、私の場合はタネと仕掛けを覚えても失敗しますが…)、これは年金に関しても同様で、“年金のタネと仕掛け”を知らないことには、ついつい偏った意見に翻弄されてしまいます。そのような情報に惑わされることのないよう、まずは“年金のタネと仕掛け”を知ることが、もっとも大切なことかもしれません。
社会保険労務士
(マギー恵太こと)原田 悠太郎